日本のすがた・かたち
2013年8月7日
夜のパリ
夜のパリ
三本のマッチ 一本ずつ擦る
夜の中で
はじめのは きみの顔を隈なく見るため
つぎのは きみの目を見るため
最後のは きみのくちびるを見るため
残りのくらやみは 今のすべてを想い出すため
きみを抱きしめながら
私の好きな ジャック・プレヴェールの詩です。
一本のマッチのあかりが描き出す愛のシーンは、まさにシャンソンです。
いつも私は、建築の基本計画を始める段階から、「あかり」の計画も始めます。
今もあかりに憑りつかれているような夏の夜ですが、人間とあかりの関係を考える上で、この詩は象徴的で劇的です。私が構想する照明デザインの核心をついていると思うことも度々です。
夏の風物詩になっている精霊流しが、水に映ってきれいです。
亡くなっている人の供養のために人々は火を灯し、水に流すことをします。
10数年前にインドの聖なるガンジス川に火を浮かべ、亡き母の供養をしたことがあります。流れに浮かぶ火は、私の思いそのもののようでした。
人間は火を燃やし、今、生きている自分を励ましているのでしょう。
デザインするあかりも、自分を励ましてくれるようなともし火になるといいな、と思い描いています。
君のその眸に映る線香火は 夏の闇間に点るともし火
(写真 夏の風物詩 線香花火)
2013年8月7日