イベント情報

2018年5月9日
逗子「新緑の茶事」

前日の大荒れの天気が嘘のような晴天日。
11時半の席入りに合わせ蓮客と駅で落ち合う。

寄付に入れば、小野田雪堂筆の万葉仮名なる「いろは歌」。
懐かしさに暫し瞑目。

白湯を受け、待喜庵露地に出る。
庵守の青モミジは陽光に映え、一同を迎える。
露地の風情はことのほか爽やかで、青苔が瑞々しい。

蹲踞で水を使い、躙口より席中に。
暗い床に一行物が掛かる。

「白雲深処掩柴扉」宗室(淡々斎)の端正な筆になる。
進んで炉に掛かる釣釜を見る。
5名の連客が付くと一呼吸置き、茶道口が開く。

「どうぞお進み下さい」
「失礼致します」
主客の挨拶。露地の風情、床掛物の問答に移る。

「截断人間是与非 白雲深処掩柴扉」

人間(じんかん)の是と非を截断(せつだん)して
白雲深き処柴扉(さいひ)を掩(おお)う

人間の字はニンゲンとは読まずジンカン。人の世の世間、世俗、巷の意。
柴扉とは雑木で作った粗末な庵のこと。

世俗の喧騒を離れ、雲深き山中にあって人間社会での是非、善悪、利害、得失、苦楽、愛憎などの相対的執われから離れ、世間の暗いニュースも、国会の混乱も、セクハラの話題も伝わってこない。あるのは静寂の中の鳥の声、風の音、席中の香りのみ。
喧騒の街中に住もうとも、大勢の中に交わっていようとも、心境においては主客共に人間(じんかん)の是と非を截断(せつだん)して白雲深き処柴扉(さいひ)を掩(おお)う境地でありたいとの庵主の思い。

一同意を汲み是深謝する。

初炭が始まる…。

(以下続く)

2018年5月9日

2018年4月7日
逗子の茶事

三年前、新築した茶室の名前を付けて、との要望がありました。
私が設計した茶室の名付けは数軒ありましたが、手掛けずに完成しましたので、というのは初めてでした。
ご厚誼を頂いていてお断りできない状況を考え、快諾しました。

庵号は「待喜庵(たいきあん)」としました。
待喜のいわれは「天来待瑞喜(てんらいずいきをまつ)」から採ったものです。
「天来」とは天から来たる、「瑞喜」とは喜びの瑞兆、という意味で、いつも私は設計をしながら、プランがまとまる兆しが天からやって来るように、と、それを待つ言葉にしています。

庵主が茶友との交流を重ね、その喜びの兆しをこの席で待つように、との願いからでした。
「待喜庵」と書にしたため謹呈させて頂きました。
そして茶席披きの茶事に正客として招かれました。

木の香漂う庵は良く工夫され、庵主自身が、これからどのようなお茶をして生きて行きたいのかを教えてくれる造りでした。
露地には植えられたばかりの青モミジが印象的で、モミジ越しに見える庵号の扁額は輝いていました。

私も一昨年の十一月に待喜庵主をお招きして「お祝いの茶事」を催しました。

玄関床 自書 短冊 「天来待瑞喜」
寄付  小野田雪堂詩書 「友到談古今・・」
本席床 清田保南老師 一行「随処作主」
茶入  志野肩衝 銘「天来」自作
濃茶碗 赤楽 銘「寿福」長入
茶杓  煤竹 銘 「庵守(いおもり)」 自作
添歌「待㐂なる庵の守の初紅葉 幾代も芽吹け主に寄り添い」樵隠庵詠
炉縁  桐霊芝喰い鶴金銀蒔絵  自作

露地の紅葉が客一行をお迎えしました。

先日、待喜庵主より茶事のお招きがあり、今月末に参上仕ることにしています。
茶の湯の行き着くところは茶事一会。
私にとってのイベントは茶事一会に勝るものなし。このようにして茶事でお招きし合うご縁を有難いと思っています。

庵主の待つ地は逗子。
逗子は私が20歳の頃住んだ思い出の街。
また思い出がひとつ増えそうです。

 

   楽しみは逗子の庵の青紅葉 また逢い見ゆを待つるこの時

 

写真:「樵隠庵」露地の青モミジ

 

 

2018年4月7日

2018年3月6日
一会如何

 

今年の10月末に名残の茶事を催すことにしていましたが、仕事などの都合で11月末に変更することにしました。

名残では縄文期の「タイ・バンチェン土器水指」を使用し、縄文時代をテーマにした茶事にすることを楽しみにしていましたが、またの機会に。

11月は茶家では子の月の正月で、炉開きの月になります。
残暑厳しい頃から正月を迎える準備を始め、大掃除や露地の手入れや四つ目垣、軒樋などを青竹に変えことになります。

茶の湯は季節の到来を待つ行事で、その時期に相応しい儀式をもって行いますが、この儀式こそ、先祖が日本列島に棲み始めた頃からの記憶ということになります。

茶事の根幹を成すものは、自然への感謝と先祖への謝恩で、とどのつまりは人として健やかに生きるための儀礼と儀式いえます。
30年も催していると、なぜこの儀式が絶えないのか理解できます。
多分、それをリードしている茶味という茶の美意識が人々の心を動かして、行為に誘っているようです。

先賢は「美しいものに触れると情操が高まり、品格が高まる」と諭しています。
茶事に勤しんでいる人たちは、きっとこの情操の高まりを実感していると思われます。
歴史、気象、天候、宗教、五行(木、火、土、金、水)、庭園、建築、美術工芸、料理、服飾、礼儀作法、音楽などを包含した茶事の儀式は、まさに森羅万象を表現する行為といえます。

未だ11月までは時間がありますが、今年は露地の植栽を剪定する必要に迫られ、すでに始めています。
お招きする客方の顔を思い浮かべながら枝を伐り、草を引いています。

ただひとつ、茶事二百会で私の品性が相当高まったと思っていたところ、先賢が「品性は人により乱高下する。」と。
そうだよな、と、素直に納得。

掃除から始まり、掃除に終わる。
茶事は古人と会える楽しみも…。

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表題の一会如何(いちえいかが)を(いっかいどう?)と読んだ客人がいた。
一同悶絶無声の爆笑でした。

写真:丹波変沓茶碗 銘「安蛮技也瑠土(アバンギャルド)」自作

 

 

2018年3月6日

2018年2月4日
コンテスト応募

 

本日、2月4日付けで「WIT STUDIO賞 WITノベル部門」コンテスト応募受付通知が届きました。

編集担当の河嶋庸乃さんの勧めで応募した受付通知です。

聞くところによると、受賞すると映画になるかも、とのこと。

映画監督もやってみたいことのひとつ。

皮算用も甚だしいと、誰かの声。

 

  〽 やってみなけりゃ分からぬけれど  明日も夢見る声出して

 


 

「WIT STUDIO賞 WITノベル部門」コンテスト 応募受付通知
Kindle ダイレクト・パブリッシングをご利用いただきありがとうございます。

このたびは、「WIT STUDIO賞 WITノベル部門」コンテストにご応募いただき、誠にありがとうございます。

以下の作品の応募を受け付けましたので、ご連絡いたします。

知音 (新之介文庫)
月華の海 (新之介文庫)

なお、2月1日中に出版が開始されたタイトルも応募受付の対象とすることになりました。

お客様により満足していただけるサービスをご提供できるように努めてまいります。 今後とも KDP をよろしくお願いいたします。

Kindle ダイレクト・パブリッシング

 


 

新之介文庫の河嶋です。
長らくお待たせいたしました。
この度、Amazon.co.jpより、kindle版にて太田先生の小説を発刊いたしました!

新之介文庫
小説 『知音(ちいん)』 太田新之介著

朝子は茶事に招かれ、
迎付で思いがけない再会を果たす。
それは二十二年の歳月が、
一瞬にして昇華する瞬間だった。
「人は相逢うて、そして別れ、
別れて、そしてまた……」

メインとなる物語の舞台は、追善の茶事の二時(ふたとき)。
準備、道具揃え、茶事の進行、料理、炭、お茶の点前……
お茶事の時の流れに身をおいたことのある方にとっては、あの時の感覚を呼び起こす描写が。
未だ茶事を経験したことのない方にとっては、未知であるがゆえに無限に広がる指南書のような。
そんな二時の中に、絡んではほどけ、ほどけては絡む縁の糸がちりばめられていいます。
和の心にて候。
太田新之介が描く、茶事が織り成す、邂逅の物語。
一人でも多くの皆様のお手元に届きますよう、願っています。

ご購入方法
Kindle版 『知音』(新之介文庫)
◎https://www.amazon.co.jp/dp/B077LC6L4X/ref=cm_sw_r_li_awdb_wuqeAb78WRAHE
◎Kindleストア>知音で検索
ご購入いただいたKindle書籍は、Kindle(Paperwhite)または、Kindleアプリをインストールした端末(スマートフォン・タブレット)などでお読みいただくことが出来ます。
Kindle版書籍をお読みいただくには…
・Kindle(paperwhite)で読む
KindleとはAmazon.comが製造販売する電子書籍を読むための端末。また、「Kindle」という名前で同名のアプリ、および電子書籍関連サービスのことも指します。
・Kindleアプリ(無料)をダウンロードして読む
Kindleストアの電子書籍はPaperwhiteがなくても読むことが出来ます。
iPhoneやiPad、Android端末(携帯・タブレット)があれば、対応アプリをダウンロードすることで読むことが可能です。

『知音』を皮切りに、電子書籍として発刊予定のお知らせをしておりましたタイトルが続々と後に続いていく予定です。
どうぞ、ご期待ください。

(1月31日河嶋投稿文)

2018年2月4日

2018年1月31日
スーパームーンの夜に

1月31日、小説『月華の海』を電子出版しました。
2010年8月3日の脱稿から七年半の歳月が過ぎています。
この前の年に私は人生の岐路に立つことになり、進む道の選択を迫られました。
幾つかの道がありましたが、出した結論は「最も困難な道」の選択でした。
その時は、それが自分の力量とは思いたくなかったのですが、今にして思えば、自然の成り行きというものでした。
40年近く続いた設計事務所の組織を解体し、スタッフを解雇し、弟子たちとの縁を切り、建築家として独りでやって行く決断でした。

八名の身の行く末をそれなりに安堵させることができましたが、私の裡では若い建築家の行く末や、私を慕って弟子になってくれた人たちに対し、伝えられなかったことの悔しさや未練が募り、その幾つかがこの小説を書かせることになりました。
それがせめてもの私自身への慰めでもありました。

物語は、若い女性の建築家が幾多の困難に遭遇しながら、伝統に目覚め、歴史に残る建築を造って行くものでラブストーリーでもあります。

昨年から編集者を得て出版の準備が始まり、『知音』を電子出版で上梓し、今回も『月華の海』の上梓となりました。
これからの出版予定は製本刊5冊、電子出版9冊を予定しています。
ご高覧頂ければ幸いです。

 

今夜は奇しくもスーパームーンで皆既月食。吉瑞か、何かが始まるような気もします。

写真は、編集担当の河嶋庸乃さんが送ってくれた月食シーン。

 

 

 

2018年1月31日

2017年12月30日
名建築探訪

名建築・みがき隊の及川隊長がHPの「名建築探訪」に投稿しています。若い人たちと建築の精髄を探求できることを嬉しく思っています。

彼らはいずれ先人の為してきた建築の精華を体得し、また後の世に伝えてくれることと思います。

先人が営々と培ってきた日本建築の精華は、人類に大きな示唆を与えるはずなので・・・。

 


願心

 

本年の初夏、名建築探訪として、みがき隊事務局メンバーは講師の太田新之介先生にご一緒して奈良の東大寺へ赴きました。

国宝の南大門では、鎌倉期の大仏様の意匠特性を確認した後、皆で参道を少しずつ移動しながら門が一番美しく見える場所を探しました。

建築には必ず視点場というものがあり、設計者の考えに心を重ねつつ、門を通して見える大仏殿の見え方などから、その場を探し出す試みはとても興味深い体験でした。

さらに大仏殿金堂に進むと巨大な仏殿と仏像は、まさに世界遺産としての歴史と風格を放っています。私はその空間に身を置きながら、「我々には遠く及 ばない古人の偉業だ」としか捉えられませんでした。

しかし、太田先生は仏像や建築に込められた「願心」の大きさ、強さは現代の私達にも注がれていて、そして今の世でも同じく姿・形に現わす事ができると語られました。

どのような文化財であっても、時の財力と権力によって贅を凝らしただけの庭園や建物と、思想性が脈々と受け継がれ、高い美意識が結ばれて緊張感ある空間が今に残る庭園や建物とでは、おのずから決定的な差異があり、後者こそが「名建築」として本来の力を有しているといえるでしょう。

東大寺は歴史上、焼失などから三回復興されていますが、各時代に復興を求める発願者が現れ、極限られた人の崇高な信仰心が多くの誠心に伝播し、寄進建立された事を知りました。
それは東大寺が「名建築」としての価値を有していて、その思想が継承され、再興を実現させる働きを持っていた事に他なりません。

東大寺南大門にある高さ8mを越える二体の金剛力士像は、運慶一門の快慶を始めとする十数名がわずか二か月足らずで完成させたと伝えられていますが、その背景には二人の高く深い信仰心があったと言われています。
本年、良縁を頂き、奈良国立博物館で開催された「快慶展」と、東京国立博物館で開催された「運慶展」の双方に行く事ができました。

展示品という言葉は適当ではない、崇高で力漲る仏像の数々からは、二人の仏師の卓越した技能とともに、その中に込められた「願心」の大きさを実感しました。

太田先生は、人は物事を成そうとする都度、「願心」を打ち立てる事が重要で、そして「願心」なるものはうつろい易いため、消えないように不断の営みが大切だと語られています。

これからも名建築を探訪し、そこに込められた様々なメッセージを受け取りつつ、名建築・みがき隊の活動がより多くの方々とともに広がりを持てるように、来年に向け「願心」を立てようと考えています。

 


HP転載抜粋

http://migaki-tai.org/archives/1040

 

 

 

 

2017年12月30日

2017年12月11日
錦秋の庭をめぐり

名建築・みがき隊の隊長及川博文さんが、「錦秋の庭をめぐり」と題してHPに投稿されています。

今年も錦秋の箱根に行ってみたかったのですが、このところ多用に過ぎて叶わず、及川さんの一文で紅葉を愛でることに。箱根の神仙郷は名園の中の名園。一年を通じて日本の美を堪能できるところです。

以下、HPより転載。

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錦秋の庭をめぐり

今秋、早稲田大学の生涯学習講座にて、箱根強羅にある神仙郷(国の登録記念物)の庭園を龍居竹之介先生(日本庭園協会名誉会長)の解説で巡る機会を許されました。

秋深まると、箱根には多くの観光客が訪れますが、箱根美術館が建つ神仙郷の庭は紅葉の美しい庭園として近年人気が高まっています。
龍居先生を先頭に、二つの滝の景、自然な山中の景、明るく開放的な巨石の景など、次々に展開する景観を楽しみながら一行は庭内を進みました。
神仙郷は傾斜地を巧みに生かし、箱根外輪山の遠望と一体化した庭で、巡る場所毎に視点場があって、飽きず庭を楽しむことができます。
苔庭では、鮮やかな照葉が美しく、地に伸びる樹木の影も面白く、「苔の青」と「モミジの紅」のコントラストがとても印象的な情景をつくりだしていました。

こうした庭園では、建物から見る景色は緻密に計算され、また建物も庭の一部として溶け込んでいて、建物と庭が不離一体である事を感じます。
龍居先生が庭や建物の見方について、お話しくださいました。
一般的に皆さんが庭や建物を見る時、「いつできたのか」、「誰がつくったのか」という事を必ずというほど聞きたがるものです。
そして、その情報を知ると…ろくに庭や建物を見ないで、安心して帰っていくんです(笑)

胸に手を当てれば…苦笑いしてしまいます。
いつできた、誰がつくった、だけに左右されるのでは無く、自らの感性を働かせ、純粋にその空間の面白さや美しさを探訪することが、とても大切な事であるとの教えです。
艶やかな景色を心に写し多くの学びに感謝した一日、自らの感性を高めて、来年の錦秋の頃、再びこの庭を巡ろうと思いました。
(写真上:神仙郷 石楽園から箱根美術館を見る)
(写真中:龍居先生の解説にて神仙郷を巡る)
(写真下:神仙郷 建物と庭/観山亭と茶室「山月庵」竹門)
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「神仙郷」文化遺産オンライン
早稲田大学エクステンションセンター
講座「倒叙日本庭園史」

2017 旅好きが選ぶ!日本の紅葉名所ランキング (神仙郷 箱根美術館 6位)

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名建築・みがき隊HP

http://migaki-tai.org/archives/890

 

2017年12月11日

2017年12月3日
名建築・みがき隊

この夏から本格始動した「名建築・みがき隊」の方々が誕生日を祝ってくれました。

二十歳の頃に感電事故に遭い、九死に一生を得たことから、誕生日は命日だと思うことにして、なるべくお祝いもしないようにしてきました。ただ祝い事は好きなため、他人のお祝いは大いに盛り上げてきました。

今年は私の五十回忌というところでした。

ところが先日、みがき隊の方々との打ち合わせに臨むと、何と、盛大にバースデーパーティーが・・・。

段取り良く考えて頂いたことで、無駄な抵抗もできず、ローソクを吹き消した時には目頭が熱くなりました。

そして、隊長始め隊員の皆さんからあたたかい寄せ書きや、及川隊長の家族の方からのお祝いが・・・。
素敵なプレゼントでした。
感激でした。

 

その中の一枚のイラストに目が留まり、尋ねると今野貴広チーフの絵でした。
隊長と事務局の日野さんの絵も。

及川さんは私の現在の姿、日野さんは非日常の姿、、今野さんは私の十年後の姿とのことでした。

それぞれの絵は中々雰囲気があって嬉しいものでしたが、今野画はフランスで流行っている風刺画だと思いました。
この才能は非凡なもだと感じたものでした。彼は優れた建築家になると。

美味しいケーキを頂きながら、この仕事を続けてきて良かった、と改めて思いました。

 

まだ日の浅い「美我輝(みがき)」隊の講師ですが、来年もこのプレゼントを頂けるように励もうと思った次第です。

 

 〽「我 美しく輝き」たいって思った時は 雑巾片手にひと磨き

 

イラスト:上 今野画 下左 及川画 下右 日野画  下 隊員の皆さんのお祝いメッセージ

 

名建築・・みがき隊HP  http://migaki-tai.org/

 

 

2017年12月3日

2017年11月13日
月立(つきたち)

月立が転じて「ついたち」になりました。朔月のことで新月の異称です。
新月の頃となる北鎌倉の雪堂美術館では、第10回「雪堂茶会」が行われます。
茶会は毎回三人の席主により催されます。私も席主の一人で参加していますが、回を重ねる度に面白くなっているように思います。
その面白さの元を考えてみると、茶の湯の世界を体現できる楽しさもありますが、何よりも毎回実感するのが小野田雪堂という人物の発見です。

1995年11月、雪堂翁との邂逅は私にとって人生の一大事でした。そして十年の交流は珠玉のような時間でした。
人は出会い、そして別れるのがさだめ。
こうして今年は雪堂翁の十三回忌を迎えました。「光陰矢の如し」といいますが、月日の移ろいの速さは年々増すばかりです。

今ひとつの元は、茶会の道具の第一に挙げる雪堂画賛の掛物、「この今をありがとうございます」です。
これは席主の一人のKNOBさんが、初回から床掛物と推してきたもので、毎回がこの掛物を中心とした道具組となっています。

「この今に感謝します」、という言葉は、万人に通ずる魔法のような愛語で、健やかに暮らす秘訣を教えています。
ですが、考えてみると、日常はこのようなわけには行かず、二人いれば争い、妬み、恨みは常住しているものです。しかし、それでも雪堂翁はこの一言を持ち、人をどこまでも信じ、案じて生ききりました。

茶の湯の面白さと、床掛物のひとこと。
この奥行きと幅の広さに何時もワクワクしている私がいます。
今回の茶会の主役である雪堂翁に薄茶用の茶碗を献じたいと思っています。
千二百万年前に堆積したという泥炭を元にした黒泥で作り、今夏に芝川の佐々木窯で焼成した茶碗です。
銘は「月立」。新月のことです。

「さあ、皆さんで新たな日々を歩む始まりの日にしましょう」。
朔日のムーンパワーをもってKNOBさんの点てるお茶は、きっと美味しいと思います。

私も雪堂翁が晩年に書いたこの書に会いに行くような気がしています。

席主を一緒にされる茶道教授岡山喜代子先生、社中の皆さん、雪堂翁ゆかりの方々の活躍も楽しみです。

 

写真: 黒泥茶碗 銘「月立」自作 2017年

 

 

2017年11月13日

2017年11月8日
11月19日 第10回「雪堂茶会」

 

11月19日(日)第10回「雪堂茶会」が雪堂美術館で行われます。

私にとってのこの茶会は、美術館の門である「雪堂門」の設計から始まっています。
ディジュリドゥ演奏家のKNOBさんこと中村亘利さんが下記の一文を書いています。

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開門式

2004年11月3日。雪堂美術館が開館しました。 午前9時から 開門式が執り行なわれました。スーツ姿でばっちり決まった雪堂先生と  建築をされた太田新之介さんから贈られた着物を着られ人力車で登場された奥様芝雪先生。 このことを知らなかった雪堂先生はびっくりしながらも うれしそうに目に涙を浮かべていました。 御来賓に参議院議員前国家公安委員長の 小野清子先生  町田デザイン専門学校校長の 横山武人先生 新経営研究会代表の 松尾隆先生を迎えて 開門式は始まりました。
斎主 太田新之介さんにより お祓い 祝詞があげられ 水引き結びきりを 館長 雪堂先生が行いました。 そして 僕が初めて目にした 開門奏上 浄められた竹を持った 新之介さんが 「千歳楽 萬歳楽 永々棟 開門」と発声され その間合計7回 打ち付けられました。 初めてみる 日本の伝統的な建築の儀式に 震えるような感動をおぼえました。 木で地面を打つのは 天と地を繋ぐ、大地に祈りを伝えるという意味があるそうです。 そして 館長夫妻により 門は開けられました。 清清しい檜の門をくぐると、今までの様々なことが頭の中を駆け巡りました。 先生が御近所に迷惑にならないようにと 最小人数で行われた開門式の後は美術館の中で沢山の御来賓の方々を迎えての 開館式が開かれました。 雪堂先生御夫妻や 御来賓の皆様 美術館設立を支えてきた建設委員新之介さん ひとりひとりの思いのこもった言葉 ひとつひとつが心に染みました。
建設委員の若い仲間を代表して 僕が演奏する番となりました。 演奏前に話すことを決めていたのですが、おめでとうございますと先生と目が合った瞬間に誰よりも きっとこの日を望み  志し半ばにして亡くなられた先生の御子息 ひとしさんのことが 僕の心の中にいっぱいに思い出されました。 絶対に喜んでくれてるだろうな。 きっと 今日もどこかで見守ってくれてるだろうな。  そんなことを思ったら涙が出てきて しゃべることが出来なくなってしまい、一言話して、すぐにディジュリドゥに口をつけました。 何も考えず ただ雪堂先生 芝雪先生 今回の設立に御尽力を承ったひとりひとり 雪堂先生と共に歩んでこられた書藝新潮社の先輩方 そして ひとしさんに吹こうと思った。 いろんなことが思い出された いろんな人の笑顔が浮かんだ。 あふれる鼻水をすすりながら 泣きながらディジュリドゥを吹いた。 こんなことは きっと 今後もないだろうと思う。 そして こんなにうれしいことは生まれて初めてだった。 本当に本当に 開館できたことを心から喜ばれている先生。おめでとうございました。 御協力いただいた すべての方に心から感謝いたします。
これからが また新たなスタートです。 ひとりでも多くの方が この美術館に 小野田雪堂という人間に繋がっていくように 頑張っていきたいと思います。 開館準備の時 新しく出版された一字千金のサイン会は先生が おつかれになるから止めましょうとの意見の中 「僕はやるよ。倒れるまでやるんだ。みんながこんなに頑張ってくれたんだから」と先生は笑顔でおっしゃいました。 開館初日 沢山の方にサインをされる先生名前とサインを書いていただきうれしそうにされる方々。 こんなふうに 幸せが 笑顔が生まれる美術館に関われている今を本当に幸せに思います。  この今をありがとうございます。 ひとりの願いが 万人の願いに….

合掌  中村 亘利 (KNOB)

ノブさんのHPより転載

 

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そして、第1回「雪堂茶会」の主催者あいさつ文。

ごあいさつ

小野田雪堂先生は生前、講師の太田新之介さんに美術館が開館したら樵隠塾を開きたいと望まれていました。先生は去年の9月、第1回の樵隠塾を開くことができ、何よりと喜ばれておりましが、その矢先、10月15日にお亡くなりになりました。
塾の継続か否かの時、皆様からの強い要望にも支えられ、鎌倉樵隠塾を1年間継続して参りました。この9月から2期目に入ることになり、今期からは塾の組織を整え、皆様のご要望に応えて、講座に加え新しい企画をさせて頂くことになりました。
第1回の行事として、雪堂先生を偲ぶ茶会を企画いたしました。これは先生の書を床の間に掛け、講師の太田新之介先生がご亭主となってお茶会をするものです。
今回は、太田先生が雪堂先生と中国旅行をされた時、列車の長旅の間に、茶籠を使いお茶を点て、車中茶会をされたことにちなみ行われるものです。ご亭主に、雪堂先生の思い出話や、書や茶の湯での交流のお話しをして頂き、また、KNOBさんには「雪堂先生に捧ぐ」というテーマのライブをお願いしております。
この「雪堂茶会」は樵隠塾の恒例行事とさせて頂き、毎年、春秋に開催できるよう努力して参りますので、宜しくご協力のほどお願い申し上げます。
11月19日は、和やかで楽しいお茶会になると思っております。鎌倉樵隠塾の塾生の方に限らず、ご関係の皆様にもお友達をお誘い合わせの上、錦秋の北鎌倉にお出かけ下さるようご案内申し上げます。
開催日:平成18年11月19日(日)

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そして雪堂氏13回忌の来たる平成29年11月19日(日)の奇しくも同月同日に第10回の開催となりました。
錦秋の北鎌倉へ、皆さまお誘いあわせの上、お出かけ下さるようご案内いたします。

http://blog.livedoor.jp/tennen_koodoboku/archives/72987836.html

 

 

写真:2004年11月3日 雪堂美術館「雪堂門」開門式

下 開門された「雪堂門」と添えられた芝雪梅(鹿児島紅)

 

 

 

 

2017年11月8日