Sのプロジェクト

2019年11月6日
現代はいつから

日頃、「現代では~」「現代人は~」と耳にするたびに、現代っていつからだろう?という漠然とした疑問がありました。
歴史学上の定義は別として、感覚的には戦後からを現代と捉えることが多いように思います。

しかし、自身の過去を振り返ってみても、中学生の時の「現代」(80年代初め)、社会人なりたての頃の「現代」(90年代初め)、放浪していた頃の「現代」(21世紀初め)、そして今令和元年(2019年)で言う「現代」・・・・・・と、この40年あまりの時間でさえ、同時代としては語れないほどの変節や転換期があるのは明らかです。
戦後からひとくくりに「現代」とすること自体、かなり無理がありますよね。

 

三島御寮は、まさしく「現代」の茶の湯施設となります。
縄文時代から受継ぐ過去の様式美を踏襲しながら、これから三百年は続くことが可能な建築を作るというのですから、現代・近代を飛び越し、今この時代も超越していく、そんな壮大な時間スケールの建築になります。
歴史上切り取られた一時的な「現代」に収まることのない、その雄大な時間軸を考えますと思わず身震いします。
そこに携わる者は、長い歴史の中では自分たちは点に過ぎないという謙虚な意識と、この時代に誰かがやらねばという強い使命感の両方を持ち合わせてなければ、と思う次第です。

 

望月美幸(建築家・JIA会員)

 

 

2019年11月6日

2019年10月21日
木の建築

三島御寮は、本物の木の建築を目指します。

よくよく考えてみると、「本物の木の建築」とは何と怖い言葉なのでしょうか。
「木の建築」についてだけでも、何をもって木の建築というのか、という話から議論は尽きません。
例えば、木造建築や木構造ときくと、主要構造部を木造とするなど技術的な定義で説明できそうです。

しかし、「木の建築」となると、構造的な技術や言葉の定義では収まらない何かを感じます。
そこには、木という素材の持つイメージ、そこから連想される大地や自然、そして何より私たち日本人に脈々と受け継がれてきた木に対する信仰など、日本文化の背景まで思いが及ぶからでないでしょうか。

 

ここに、畏れ多い怖さがあると思うのです。

その頭に、「本物の」が付くわけですから、重みは計り知れません・・・・・・。

さて、世の中は木の建築ブームのようです。
建築雑誌を見ても、木を大胆に使用しているデザインが表紙を飾ることが多々あります。

その背景には、構造技術や防火技術によって、中大規模の木造建築が実現可能になってきたことや、地球環境問題を視点とした国産木材使用の施策などが挙げられるでしょうか。

木の建築といわれている建物の中には、表層的に使用されているものも多く、何でもかんでも木を使えばいいってもんじゃないよ、と思わないでもありません。
が、世の中の動きは、そこに真剣に異を唱えるよりも、どんな形でも木をじゃんじゃん使うべきだという歓迎ムードの方が多い気がします。

どんな使われ方にせよ、日本では木を使用することは善になるのだな~、とぼんやり考えます。
なるほど、だからこそ三島御寮では、あえて「本物の」という言葉が必要なのかもしれません。

 

三島御寮のプロジェクトに携わることは、木の建築を極めることに繋がっていくことだと考えています。そして、繋がっていくためには、相応の覚悟と勇気がいります。

知命の歳にして、未だ惑い、もがき続けておりますが、私の心を突き動かしているものは、「本物の木の建築とはなにか。これを突きつめたい。」という強い思いです。

 

望月美幸(建築家・JIA会員)

 

 

2019年10月21日

2019年10月1日
三島というところ

建築を体感して、心から“素晴らしい!”と思うとき、一体何に感動するのでしょうか。

内部空間のダイナミックさ、素材や装飾の豪華さ、プロポーションの美しさ、ディテールの細やかさ、周りと調和のとれた佇まい、また時の流れによる歴史や文化を感じて……
などなど。
これら全部ひっくるめて良いと感じたり、理由はよく分からないけど惹きつけられるということもあるかもしれません。

こうしてみると、個々の主観的な好みは別として、建築を素晴らしいと感じる要素はいろいろあるようです。
それらは、作り手(クライアント、建築家や施工者)の努力やセンスでどうにかなることと、それだけではどうにもならないことがあるような気がします。
この、どうにもならないことの一つに、立地条件(ロケーション)が挙げられます。

 

建築は、絵画や陶芸など他の造形芸術作品とは違い、地面に建って初めて成立するものですから、周りの環境も含め場所性は非常に重要な問題になります。
ですが、明確に形づくられた建築に合わせて場所を選ぶということはまずできません。

三島御寮のプランを見たとき、洗練された無駄のないスケッチと、立地の素晴らしさのマッチングに心打たれました。
富士山をバックに、高さを抑えた美しい屋根が連なるプロポーション、本物の素材と技術を駆使した木の建築。
そこは茶の湯を、日本文化を体感できる未だかつてない場所。
人々が生き生きと集う様子が目に浮かびます。
そして、三島大社や楽寿園などの文化施設が地元の人々に愛されている背景。
三島というまちの自然の美しさやほどよい町のスケール感が、三島御寮の概念にピッタリときたのです。

立地条件の素晴らしさを手に入れた三島御寮。
この場所に建つことができたのなら、建築が場所を選んだ数少ない一例になるのではないでしょうか。

 

望月美幸(もちづきみゆき 建築家・JIA会員)

 

 

 

2019年10月1日

2019年9月16日
陰影の美

昼夜問わず明るい暮らしに慣れきっている私たちにとって、陰影の美しさを意識することは少なくなってきているようです。

例えば、薄暗い土間の先に見える庭の明かり、奥座敷に反射するうすぼんやりした障子の光、
窓からの光を受けた土壁の奥深い陰影などなど。

一昔前の日本家屋には、こうした情景が日々の暮らしに溶け込んでいました。
陰影とは、明るいに対峙する暗さとイコールという単純な図式ではなく、
もう少しグラデーションを帯びたもののように感じます。

以前、古民家の改修現場で現況調査をしていた時のこと。
薄暗く埃っぽい屋敷の奥へ奥へと進んでいくと、ちょうど朽ちかけた屋根の隙間から
スーッと一筋の光が土壁を伝って、三和土の土間に落ちていました。

その光景を見たとき、はっとさせられたことを覚えています。
光によって暗さが対比されるとき、人は心を打つのだと思いました。
そして、その闇の中に美を創造することこそ、先人たちが育み受け継いできた美意識だと改めて思います。

三島御寮は、茶の湯を通して日本文化を継承するべく造られる施設です。
いつか、茶の湯の中の「陰影の美」に触れてみたい・・・・・・。

望月美幸(もちづきみゆき 建築家・JIA会員)

*現在同時進行中の設計図書本です。

『三島御寮造営図書』全33巻 発刊予定

A.第一期・基本計画
1.『構想語録』 300頁1冊 全体の造営構想を記述した短文集
2.『三島御寮造営計画書』 250頁 1冊 全体の造営構想をまとめた文書
3.『計画・基本設計図』 A2版-200枚 全体の計画図と設計図
4.『設備設計図面』 A2版-50枚 電気、水道、ガスなど設備に関する設計図
5.『照明計画図』 A2版-30枚 特殊照明に関する計画図
6.『木構造計画書』 150頁2冊 木造の構造計画
7.『造園計画図』 未定 庭園、露地などの計画図
8.『造営仕様書』 100頁15冊 造営工事全般の標準的な仕様書
9.『特記仕様書』 50頁10冊 造営工事の各棟、庭園に関する特別仕様書
10.『模型』 12基 完成模型、内スタデイ―模型4基
11.『儀礼・儀式書』 150頁6冊 三島御寮の儀礼⚫︎儀式を図と文で解説
12.『設計監理者育成指針』 240頁 2冊 木の建築家育成の手引き書
13.『経営者育成指針』 未定 三島御寮経営者の育成指針

B.第二期・設計、工事監理
14.『造営実施設計図1式』 A2版-300枚 工事施工のための設計図
15.『作事指示書』 50頁6冊 各工事の施工指針
16.『木材調書』 30頁10冊 木材の寸法、特徴、産地など指定
17. 『絵様下絵集』 100枚2冊 彫刻、金具などの下絵
18.『木割書』 30頁10冊 各棟の木材寸法の比例按分を記す
17.『造園仕様書』 50頁3冊 露地など造園に関する指示書
18.『検査手引書』 50頁3冊 材料、工事に関する検査指針
19.『原寸図』 A1版-200枚 特殊部分の実物大図面
20.『スケッチ集』 A3版-100枚30冊 構想・計画・設計のスケッチ集
21.工事監理記録』 30冊程度 工事着工から竣工までの監理記録
22. 『創作茶道具集』 50頁5冊 創作茶道具スケッチ・図集

C.第三期・事業経営
23.『三島御寮経営要綱』 未定 三島御寮経営の理念
25.『造営回想録』 未定
26.『造営句・歌・都々逸集』 未定
27.『三島御寮茶事記』 未定
28.『創作茶道具集』 50頁5冊 創作茶道具スケッチ・図集

D.その他・書籍出版
29.『造営の群像』 未定 フィクション
30.『木造のUFOが飛んだ』 未定 小説
31.『設計問答』 未定 随想
32.『伝統を創る』 未定 随想
33.『日本のすがた・かたち』 未定 随想

 

 

2019年9月16日

2019年9月1日
愚直であること

若かりし頃、愚直という言葉はあまり好きではありませんでした。
なんだか要領が悪く融通がきかない、創造性とはかけ離れたイメージだと感じたからです。
“最低限の労力で成果をあげることができる人”のような利口さに憧れていたのかもしれませんね。

年齢を重ねていくと、良い意味でも悪い意味でも、自分の能力の限界やスタイルというものが徐々に分かってきます。
私の場合、設計という仕事において、人並みになるための唯一の方法が愚直にやることだと悟るようになりました。

「三島御寮造営」という、かつて経験のない壮大なプロジェクトの中で、自分に何ができるかと自問自答したとき、ふとそんなことが頭に浮かんできたのです。
このプロジェクトは、小手先の器用さやごまかしは通用しません。
楽な方、小狡い方に流れてしまわないよう、愚直にやっていこうという思いを新たにしました。

ただし、“愚直であること”は、あくまでも仕事上のスタンス。
プライベートでは、要領の良さと効率化(=手抜きと大雑把)を重視しております。

望月美幸(もちづきみゆき 建築家・JIA会員)

 

写真:上 仁和寺勅使門
下 Sのプロジェクト シンボルマーク「木造のUFO」

 

2019年9月1日

2019年8月19日
本物とは何か?

 

「茶事を知らないものに茶室の設計はできない。」
太田先生が時折口にされる言葉です。

最近時間に余裕があるせいか、「本物とは何か」と考える時があります。
あの作品は本物だ!
あの人こそ本物の○○だ!
この技術は本物だ!
これらの言葉は頻繁に耳にするわけで、この世の中本物だらけということになります。
ただ、己の心に真摯に問いかけたとき、
人生において“本物だ!”と心から実感したことは何度あったでしょうか。

「本物だと思う」ことと「本物だと分かる」ことは、大きな隔たりがあると感じています。
巷にあふれている言葉群は、「本物だと思う」に近く、主観的で軽さがあります。
分かった風に言われるほど、分かっていないことが露呈されることも多いですね。

一方、「本物だと分かる」ためには、その人の教養や知識、体験や見立て、そして人間性まで問われるような総合的認識力が必要です。

そんなことを考えていくと、冒頭の太田先生の言葉は、
「本物とは何か」という命題に非常に通じるものがあるということに気が付きました。

私自身はというと、恥ずかしながら「本物だと思う」ことばかりです……。

 

望月美幸(建築家・JIA会員)

 

 

2019年8月19日

2019年8月12日
キーワードは?

にわか知識を蓄積中です。
浅く広くの知識は、教養にはなりえません。
でも、ないよりはまし。
という気持ちで悪あがきしております。

三島御寮については、様々なキーワードが挙げられます。
茶の湯・木の建築・祭事・神仏・儀式・儀礼・縄文文化などなど。
その根底には「日本文化」という、普遍的でありながら非常につかみにくいテーマがあります。

「日本文化とは何ぞや。」
難題です。
衣食住はじめ、宗教、風習、言語、芸能、多様な切り口は思い浮かびますが、
個々について語ることができても、その真髄にたどり着くにはどう向き合ったらよいか途方にくれます。

田先生は、日本文化を読み解くキーワードとして、
・古神道
・日本仏教
・皇室
を挙げられています。
そして、それらを実践として確立したものの一つに茶の湯があると。

うーん。うなりますねえ。
長年くすぶっていた知識欲がうずきました。

知識の海という大海原に漂流しながら、日本文化の深淵に少しでも触れられるよう、
しばしもがいてみようと思います。

望月美幸(建築家・JIA会員)

 

写真:「御守」 彫刻師・高畠彩乃作(神代欅)

 

 

 

2019年8月12日

2019年8月6日
依頼主は?

壮大な夢だと思っていました。

“茶の湯を通して、日本文化を継承するための本物の木の建築をつくる”
三島御寮の計画を初めて知ったとき、心がざわつきました。
クラっときました。
でも、その壮大さに尻込みし、遠い彼方の話だと……。

あれから数年。
それは、着実に、確実に、実現に近づいています。
一建築家の情熱、もっといえば、ある生き様を目の当たりにして、
動かずにはいられませんでした。

「ああ、そうか……。」
私は、何も見えていなかったのです。
この計画の意義も、建築家の思いも。

依頼主がいて、初めて成り立つのが設計の仕事です。
長年、それを当然のこととして設計の仕事に携わってきました。

ふと、思いました。
三島御寮の依頼者は誰?
このプロジェクトに関わりながら、その答えをじっくりと見つけていきたいと思います。

望月美幸(もちづき みゆき 建築家・JIA会員)

 

 

2019年8月6日

2019年7月25日
茶の湯の椅子

去年の暮、三島御寮造営計画の最終案がまとまりました。
後は基本設計、実施設計を進めて行けばいいというところまできました。模型や3Dによるまとめに着手する段取りも出来上がっていました。
しかし今年に入ってどうしても解決しなくてはならない課題が壁となり、作業が進まなくなりました。

「椅子を使うか否か」。

茶の湯のステージである三島御寮の各棟は主として木造数寄屋建築で、床は主として畳が敷かれています。当然、伝統を重んじた茶事や茶会のための施設であるため、日本の風習である「座る」という空間を考えて計画を進めてきたわけです。

これから五十年先を考えた時、果たして畳に座った点前やもてなしが続くのか、高齢者が増え、椅子で生活する人が殆どとなる可能性が高く、畳に座る行動はなくなるのではないか。
茶事・茶会の形態も時代と共に変化してライフスタイルに合った椅子による動きと、それに沿った空間が必要となるのではないか。
茶事・茶会の儀礼・儀式が美しく執り行われる建築空間が目指すところではないか。後々の人たちが眉をひそめることはないのか。
伝統と新様式の狭間で揺れ、幾つかの名席を訪ね調査をしていました。

「茶の湯の椅子を創ろう!」

元号が令和に変わり、出した結論は「椅子による儀式空間の創出」でした。
最大の理由は、私自身も既に正座に耐えられず、あぐらと椅子併用のお茶に化していて、客の過半は椅子を所望し、正座は苦痛の所作となっていることでした。

畳を敷いた茶の湯の席に相応しい椅子をデザインしよう。その儀式のための建築様式を創ってみよう。そう思うに至りました。
このところ長く漂っていたモヤモヤは晴れ、今は一心に鉛筆を走らせています。

また今月から気鋭の建築家が設計に参加してくれることになり、気合いが入っています。
彼女は三人目の協力者ですが、私にとっては百万の味方を得た感があります。

長梅雨もそろそろ明けそうです。
梅を干せる日が近そうで、ウキウキと…。

 

写真:今日のラフスケッチ

 

 

2019年7月25日

2018年12月30日
2019・平成最後の年に

 

Sのプロジェクト・「三島御寮」造営計画は、2019年平成最後の年に計画の全容をお知らせできる予定です。

目下、全体模型の製作中です。

 

天も地も 神も仏も 日も月も 貫くものは そこの心根

陽が昇るのか、地球が迎えにゆくのか。
46億年も前から日々繰り返えされている運行。
そして私はこの大地に生息しています。
日本に生まれて、この頃ようやく足もとが見えてきたように思います。
今、日本の国の面白さ美わしさを発見し胸を躍らせています。

 

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For 4.6 billion years
Sky and Earth, God and Buddha, Sun and Moon
Their bridges are room full of mercy
Which came first, rising sun or being approached by earth?
This diurnal activity has been repeating for 4.6 billion years and I live on planet earth.
I was born and brought up in Japan and I at last feel like I find my duty clearly.
Now, Japan’s fun and beauty, which I have discovered, make me so excited.
(訳 あさいまみ)

 

写真:駿河湾西方眺望12月31日

2018年12月30日