日本のすがた・かたち
寺院などの建築群は何期かに分けて工事をすることがあります。
過去携わった禅寺再建の工事は三期12年の長きに亘りました。
その仕事が終わった頃、私は五十歳になっていました。
この本格的な木造建築群の設計監理を経て、何故か漸く設計ができるようになったと思えるようになりました。
大径木を使った本堂から、径60ミリの自然木を使った茶室、そして名席の解体修理、他の改修工事の仕事が、何時しかそのように思わせてくれたようです。
その頃の私は、人生の第一期が終わり、これから第二期に入る気配を感じていました。
これからの人生は、今日まで50年間過ごしてきたことを土台にして、出来ることが山ほどある、と朧気ながら思い、「さあ、オレの第二期工事が始まるぞ!」と気合が入っていました。
丁度、家族もそれぞれ独立し、どうにか一期工事が済んだような時期でもありました。
あれから20年、性格は少し変態性分裂症気味に変化しているように思いますが、やろうとしていることは人生を支え、年々、好奇心は多様化の一途をたどっています。
この数年は、茶の湯のステージ「三島御寮」造営計画に就いていて、一時は中断する場面にも遭遇しましたが、現在は仲間たちと一緒に大いなる夢を描いています。
古稀を迎えた知人たちと会うと、病気と治療と薬の話しが多く、老後という枯淡の境地を地で行っています。総じてどのように末期を迎えるかの想像が逞しくて、色気のあることが好きな私は、とても付いて行けない環境にあります。
体力も60代に遜色なく、老人の役には立てなくても、若人に背中を見せられそうな現在は、ジジイ的青春真っただ中。
第二の人生がない私は、第二期の人生の完成にむけて邁進しています。
いずれ来るだろう彼岸行きの日まで、めまぐるしく多用の刻を過ごしながら…。
ささやけば緑蔭深く輝きて 果てることなき夢のつづきを
写真:「高層建築」古代都市の面影 カルヤト・アルファーウ(フレスコ)
前3~3世紀後半 アラビア半島