日本のすがた・かたち
少し前の話になりますが、知り合いの女性のお宅が半焼した折の話です。
台所から火が出て、入浴中の浴室に煙が入ってきて火災に気づき、パニックになりそのまま外に逃げたそうです。
その時は一糸まとわず、とっさに携帯だけを持って出たとのことでした。
話を聞いた私はその時の姿を想像し、どの折どのような展開になったのかを思って一緒に笑いましたが、その後の様子を聞いてみると携帯を持って逃げたことが正解だったとわかりました。
もしそれが現在の私だったら、逃げる時にはスマホを持って、ということになるはずで、見られるのは一時の恥、スマホ焼失は当分のダメージとなることは必定です。
私にとってもスマホの存在価値は高く、既に人生の伴侶といえるようです。
昨今は、電車に乗ると乗客の約八割はスマホをいじり、後の人はスマホを持ったまま寝ているか、目を閉じて音楽でも聴いているのか、車窓から景色を見ている人は見かけません。満員電車でもスマホ片手の乗客がいます。これらの電車の乗客スタイルは20年ほど前には見なかった光景です。
人間は好奇心旺盛で、特に便利なものには関心が高く、それがどのような副作用があろうと構わないところがあり、便利さと好奇心を刺激できれば商売になるというのが古今東西の歴史でもあります。
世をあげてのAIの開発志向や宇宙開発も、言わば人間の本能である好奇心と我欲の為せる業で、止めようがないことといえます。
このまま時代が進んで行くとどうなるのか、と考えてみることがあります。
衆院選真っただ中ですが、誰しもが安全、安心、効率、効果、利益などを目指すと声高に叫んでいます。一方、そこには危険、不安、無駄、汚染、権益、利権なども同居しています。
結局のところ生きものは、なるべく自然環境の中で、自然と対立することなく順応し、声高に叫ぶことなく、人間も自然を構成している一員として生きることを目指すことが肝要のように思います。
生活環境の要である建築を造る仕事をしている私は、特に日本人は足元にある自然素材で、それも供給無限の木を使った建築を多くすべきだと声高に叫んでいますが・・・。
なるべく自然の神秘に浴し、自然のエネルギーを使い、自然の食物を食べ、自然の美しさに感動する。人類はこれを目標に生きるようになればと思います。
そういう私も便利なものには勝てず、この頃は己の言行不一致に悩んでいます。
そこで都々逸。
「伴侶って・・・」 昔ゃ夫か妻だったのに 今じゃスマホか紙オムツ
写真:Webより転載