Sのプロジェクト

2013年2月5日
悪戦苦闘―作歌

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やらなければならないことが沢山あるのに、気が入らず少しも進まない…。

よく遭遇する状況下に今、おかれている。

建築のプランがまとまらないような時など、私は歌をよく作る。

 

  とらわれずただ悶々と想い入る 屋根のかたちは雲の動きは

  打ち寄せる波間に浮かぶ建築の その幻の深きすがたが

  想いこそすべてのすがたかたちなり 心動かず身も動かずと

 

建築を創りだすことを生業としてから早50年近く。

いくつになっても真理はつかめず、ただ悶々で悪戦苦闘。

かつて文人の小野田雪堂氏が同じ心境だろうと、贈ってくれた画詩讃。

 

  老大 頤(おとがい)を支えて 坐す  (わたしは頬杖をついて坐っている)

  知らず 寂寞の心 (寂しくむなしい気持ちがおそってくる)

  推敲 描き得ず (何度もやり直してみるが 思うようなものはできない)

  闘句 夜沈々 (句作と闘っているが 夜は沈々と更けてゆく)

   苦吟人 雪堂 □

 

歳を考えたら、そろそろ悟りの境涯に至ってもよい頃なのに。

「建父生涯筆一本」(建築家の生涯は鉛筆一本だ!)。禅語「漁夫生涯竹一竿」(ぎょふのしょうがいたけいっかん)に例えてみた。

人生、どこまで行っても分からないのだ、ということが分かってきた昨今。

今朝は雪堂先生の画幅を掛けて、茶を一服喫もう。

だんだん面白くなってきたかも。

 

 


2013年2月5日