新之介文庫だより

2018年1月17日
近詠・句歌都々逸16

 

月観れば 影も悴む 指の先

 

恋ひとつどこまで続く闇の路 絶えて変わらぬ人の命は

 

禅僧の便りが絶える春の雪 あの時の貌あの時の聲

 

この春に始めることのあれこれは  同行二人古人に連れ立つ

 

プリプリの 乳房懐かし 夏の夢

 

老いの果て 誰も隔てぬ 黄泉の旅

 

何度でも 応える肌に 月あかり

 

色気叔母は ビールを飲んで 九十六

 

正月や 今ココを観る 寿老人

 

恋の恨みは消しても消えぬ  主と添うまで暮らすまで

 

「ダンシングヒーローって・・・」歌を唄って昔を偲びゃ 腰を痛めてヒローする

 

「昔ゃネ・・」歩く不倫と言われていたが 今じゃ徘徊認知症

 

皆ひとり歳を重ねて旅に出る 老いて往くなら言うことはなし

 

イヤだイヤだといってはいたが「気がつくとネ」 気持ち吉野の山桜

 

青春は 汗に塗れる 多淫かな

 

柔肌を 染めて恥じらう 雪夜の湯

 

皆誰も頼りなき身の世迷言 したり顔してまた明日へと

 

色気なき貌を眺めて髭を剃る 小寒の朝未だ籠りぬ

 

黄昏の 銀座の唄に 寒時雨

 

ホコ天の 冬人もなし アスファルト

 

 

 


2018年1月17日