新之介文庫だより

2018年1月11日
近詠・句歌都々逸15

 

賀状見て 逢いたき人と 交歓す

 

戌年に 託せるものの 無きを識る

 

5日寝て 年始の客を 払いけり

 

熱と咳 どこまで続く 桃源郷

 

うなされて 話す相手は 歳の神

 

グズグズと 動かぬ手脚 三が日

 

初夢や 咳に紛れた 銀世界

 

木を伐って 使い造って二万年 我の記憶に すがた・かたちが

 

「辞世ね・・」悔いも無ければお金も無いが 恋の未練が邪魔をする

 

人は皆 それぞれを生きる隔てなく 空を観じず 生きるのも空

 

そのままで いいと誰か 裡の声

 

勿体つけてもアナタはダメよ 色即是空は色の道

 

一年の 疲れを溶かす 寝正月

 

主の速さにアタシは惑う 行くも帰るもリニヤ並み

 

あの仕草 我を彩る 景色かな

 

その内に 思うばかりで時は過ぎ 月の出汐を待つ 年も暮

 

会えるものなら会うてもみたい  時を戻してくれるなら

 

穏やかな  年の始めの 富士の根に 我が志 告げて祈りぬ

 

除夜の鐘聴き煩悩払い 明けた朝からまた積る

 

それぞれに 見える景色や 富士の嶺

 

待たせ焦らせて想いを煽る 募る憎さは主のせい

 

大雪や 炬燵の中の 淡い恋

 

大衆の 中に風吹く 寂しけり

 

 

写真: 小野田雪堂 讃  太田新之介 画

 

 


2018年1月11日