日本のすがた・かたち

2016年1月25日
日本人のものづくり

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木材は、木造建築物の構造耐力上多くの利点と欠点を備えています。

利点、欠点は、一般的条件下においてですが、下記のようだと思います。

 

利点

1. 軽く繊維に並行方向の強度が大きい。

2. 熱による膨張、収縮が小さい。

3. 加熱で強度低下が少ない。

4. 老化しにくい。

5. 熱伝導率が小さく、結露しにくい。

6. 加工、組立、工作が容易にできる。

7. 新築、増築、改築、移築、維持保全など他の構造物と比べ容易である。

8. 建設費が他の構造と比べ安価である。

 

欠点

1. 天然材のため強度が均一でない。

2. 繊維に直角方向の強度が小さい。

3. 時間と共に歪みが増す。

4. 折れ易く粘りに乏しい。

5. 燃えやすい。

6. 接合部により大きさなどが制約される。

7. 外からの力による建物変形が大きい。

8. 含水率によりちぢみ、割れ湾曲などが起きる。

9. 天然材は任意の形にできない。

10. 大型、中高層建築には向かない。

11. 腐り、蟻害を受け易い。

12. 地震、高潮、土砂崩れ、地震などの自然災害を受け易い。

 

ざっと思いつくまま挙げてみるとこのようになります。 

現代建築は耐震、不燃を基本とした造りを要求され、関連法もそれに沿っていて、構造計算により、集成財と金物使用が条件となっています。

これに異論がある訳ではありませんが、一般住宅の造りではなく、私が本格的な木の建築を推奨するには理由があります。

 

先人は木を生き物ととらえ、人間と同じように時には無造作に、時には崇め祀りながら使ってきました。

日本人にとって木は分身といえる存在で、本格的な木造建築には、先人の千数百年の智慧と優れた記憶が伝えられています。これは世界の何処の国にも遺こっていないものです。

 

この理由を折々にひもといて行きたいと思っていますが、我が国のものづくりの原点は木造建築にあります。

現在において世界に冠たるものづくり大国となっている要因は、この優れた智慧と記憶にあり、日本人の特質が様々な国や民族にとり政治、経済、芸術上の参考になるはずと思っています。

 

水の中にいて喉が渇くと水を求め、ありふれた日常の優れたところに目を向けず、外に求めるばかりの昨今に、先人の遺徳が耀きます。

「看脚下(みよきゃっか)」の一言です。

                                                                                      

写真: 西本願寺・飛雲閣(国宝)

金閣、銀閣とともに京都三名閣の一つ。430年前頃、豊臣秀吉が建てた聚楽第(じゅらくだい)の一部ともいわれている。三層からなる楼閣(ろうかく)建築。

                                                                                          

 


2016年1月25日