日本のすがた・かたち

2015年4月9日
問答

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「日本の建築はどのようなものか、と訊ねられましたが・・・」

「それ外国の方?」

「そうです。スペインの友人です。現代の日本建築は無国籍建築と答えましたが・・・」

「本当にそうかと思ったんだね」

「はい、無国籍建築と言い切れるのかと疑問に思いまして・・・」

「当たらずとも遠からずだね。高層建築は万国共通だし、住宅も世界共通のデザインになっているから、無国籍建築というのは合っていると思うよ」

「やはり思っていた通りですね。今は日本建築と呼べるような建物は無くなったということですね」

「では、私からの質問。日本建築というと、どのようなものを想像する?」

「…例えば法隆寺とか清水寺とか、伊勢神宮とか、…茶室とかですが」

「それも当たらずとも遠からずだね。でも今想像した建築には共通点がありそうだね。ヒントは素材だけど・・・」

「…木造建築…木ですか?」

「そう、木という素材を使って造っている建物だね」

「木造の建物は世界中に沢山あると思いますが…なぜ日本の木造建築が日本を代表する建築となるのか、そこがよく理解できませんが・・・」

「言ってしまえば、大昔から伝わる造り方をそのまま継承して今日に至っているところかな。つまり千数百年前に建てられた法隆寺を現在でも造ることができるということだよ」

「それは日本だけのことですか?」

「そうだと思うよ。先人は先人の智慧を営々と後に伝えてきて、そのエッセンスが今日に伝わっているからね。これは多分、縄文時代からだね。そのキーワードは「木」だよ。木が文化を継承させてきたのだと思うね」

「でも、現代の日本には木の建築は少なくなっていると思いますし、建物ばかりかグローバルスタンダード様式として無国籍なものが大半を占めているように思いますが・・・」

「地球上では英語で会話する人口が増えているように、それと同じだね」

「万国共通はITインターネット社会の合言葉ですから」

「しかし、流行のグローバリズムもそろそろ限界が近いのではないかと思うよ。共産主義ばかりか民主主義も社会主義も帝国主義も、成功したといえる成果がないし、世界の国は常に競い争っているからね」

「何か皆で調和して暮らして行ける仕組みでもあればいいのですが・・・」

「あるとしたら、日本が鎖国令を布いた江戸時代にヒントがあるね。自国の気候風土から生まれた文化資産や資源の活用かな。そして平等意識ではなく公平意識にシフトを変えることかな。平等意識からは和することは望めないな。優劣や損得が優先するし、過度の競争や争いがついて回るからね。そんな意味で建築は、その国のその時代のその人々の暮らしを写す鏡だと思うよ」

「木の建築は日本の国にある木を使い、先人の智慧の蓄積を利用し、そして次の時代に伝達する優れたシステムですか」

「如何にも」

                                                                                                                       

写真 : 金沢茶屋街     TP新宿副都心

                                                                                                                      

 


2015年4月9日