日本のすがた・かたち

2014年10月25日
順序なり

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ものごとには順序というものがあります。

何事においてもこの順序を間違えると巧く運びません。

 

建築に例をとると、基礎工事から始めなければならないものを、屋根工事から始めるようなもので、できないことはありませんが多分頓挫することになります。

先賢はこの順序について「神は順序なり」とまでいっています。

 

この頃しきりに思うことはこの順序です。

私の場合、ひとつの建築を造る際にまず考えるのが、完成するまでの順序と段取りです。

敷地を観察し、設計をして工事をし、そして完成までの想像を巡らせます。

しかし、いつものことですが計画や設計時には順序が狂うことを敢えてしてみます。

「逆も真なり」と思って物事を逆さに観てみることをしてから、また順序に戻ります。

 これは順序を間違えないための問答のようなものです。

物事がスムースに運ばない原因の多くは、人間が夫々に考え出す手順というか、順序の行き違いのようです。

順序はその人の人生観そのものであり、そして成熟した美意識から生まれてくるものです。

それ故に順序は人間が作り、調整し、そして狂わせます。

今取り組んでいる「Sのプロジェクト」の基本構想は、日本国中に木の建築を造れないか、という運動です。

縄文時代から先人が営々と伝えてきた木の建築を現代に継承し、300年、500年という歳月を次代に繋いでもらえることができれば、というものです。

この計画を景色として思い浮かべ、それに関わる何万という人や、材料を想定し、今から計画し、造り上げて行くまでのことを想像しますが、その基本となるものはやはり順序です。 

「人、金、物」が揃えば物事は成就するといわれていますが、私は何よりもその順序が大切に思います。順序は神の定めるところ、宇宙の法則のような気がします。

 

この取り組みにある方から意外な助言を頂きました。

「この取り組みは地方創生政策の目玉になる…」というものでした。

確かに地方創生という観点からみれば、各地の木の建築を生かし、地場産業を振興し、若者たちが集うようにとするこのプロジェクトは、これからの地方に貢献できる可能性はあるかもしれません。 

らゆる物事の原点は順序を違えないこと、これに改めて心致している昨今です。

 

写真: 三島の日の出 (日の出を足元から見てみると、不思議な気持ちになります)


2014年10月25日