日本のすがた・かたち

2014年2月18日
所業

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それはある日、知人の紹介から始まった。

少し時間をおいて、何度か行き来をするようになった。

やがてその思いの丈や中身が分かってきた。

心は揺れながらも、季節は過ぎて行く。

 

そして契を交わすこととなった。

この契が互いに多大な影響を及ぼすと思った。

何度も何度も空想を重ねた。

何度も何度も妄想を重ねた。

過去の歴史もその中に漂っていた。

やがて互いの想いがすがたとなって見えてきた。

そして他人を間にしてまた契を交わした。

 

すがたをかたちにすることが始まった。

私は昼夜をおかず、心を尽くすことにした。

かたちは夢に現れ、絶えず私を捉えて離さなかった。

そして月日が過ぎて行った。

 

それは、すがたがかたちとなって現れるようになった。

肌の色も、艶も、我が手の中に在り、触れる喜びに浸っていた。

できることなら、このまま永遠にこうしていたいと思った。

絶頂の時が訪れて、痺れるような感覚に襲われた。

 

すがたかたちが眼の前に出現する。

出会ってからの年月が走馬灯のようによみがえる。

あの時のすがた、あの時の色、あの時の肌…。

 

一瞬にして訪れる別離の時。

もう私の手は届かない。

無事を祈る他はない。

そして末永く大切にしてもらうようにと。

 

そして私は“建築は恋愛である„とつぶやく。

 

 

建築の設計監理を生業としている私は、設計する建築が常に恋愛の対象となっています。

三島由紀夫は“文学は建築である„といっていますが、私には”建築は恋愛„です。

 

建物が完成し、施主に引き渡される時、私の恋愛は終わります。

それは息絶えるまで繰り返される私の所業だと思っています。

 

 

写真 トップページ 設計プランの絵

   上  Sのプロジェクトのプランスケッチ

 

 

 


2014年2月18日