日本のすがた・かたち

2013年9月11日
コピー

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大昔から人間は自然から学び、自然の有様を真似、様々なモノを作ってきました。

その中で優れていると思われるものは、コピーされ次の世代へと繰り返し遺されてきました。考えてみると、この世に存在するすべてのモノは、自然からのコピーと先人からのコピーの産物であるようです。 

自分の作品はオリジナルである、と豪語する人たちも、元をたどれば過去に存在してきたものを目新しくコピーしているに過ぎないものです。

 

私も御多分に洩れていません。

つい最近分かったことですが、自分ではオリジナルだと確信して設計してきた建築も、既に先人が成したものをコピーし、自分の好みというか、肌に合ったものを加味してきたという点です。根本からオリジナルといえるものはなく、伝統という名のもとに先人の創意工夫の恩恵に浴してきたようです。

 

先人は創作する際に過去のどこを、先人のどこをどのようにコピーするかを察知して、そこを目指してきました。結果、それが商業ベースに乗って有名になったりすることもありますが、有名になった人は、伝統をコピーできる達人といえる人です。 

伝統を受け継ぐとは、昔から遺り伝わったものを継承することで、先人のコピーが上手になることですが、継承するだけでは伝承にあたります。伝統は「統(もと)」を「伝える」と書くように、先人がこれば素晴らしいと思い伝えてきた統を、また次に伝えて行く能動的行為です。

伝統は守るものではなく創意工夫を重ね、新しい創造を加えていく行為です。先人をコピーするだけでなく、先人に追いつき、先人を超えようとすることが、伝統の本当の意味といえます。

 

伝統はまた、人々に影響を与え創作意欲をかきたてる意識といえます。

自分の好みや肌に合うものは、個人の美意識ですが、その美に対する意識が他者に影響し、また優れたものを創作させていく。この美意識の連続性が永く遺っていく統ということになります。

 

美意識とは何か。

この命題に応えるには、絶えず美しいと思える物事に身を浸し、胸の奥底に微かに溜まってくる、「我の好み」と思えるようなものを、ジッと見据えて行かなくてはならないようです。

 物事の本質に迫り、どこを狙ってコピーするか、私は自分の意識が意識なく表現できるようになることを目指していきたいと思っています。

 

現在取り組んでいる「Sのプロジェクト」は、先人が積み重ねてきた美意識の発信計画のようです。

 

(我が国における究極のコピーといえる 「 伊勢神宮内宮正殿」 正面スケッチ)

 

 


2013年9月11日