日本のすがた・かたち

2010年9月28日
森に吹く風

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吹き荒れる嵐の梢も和みゆき
森に棲むよの人に月影

                                                            
現存する世界最古の木造建築は、奈良「法隆寺」の金堂、五重塔(607年建設、670に焼失後再建)です。
法隆寺は木造建築として我が国で最も有名な寺院建築で、1993年世界遺産にも登録されています。
なぜ、世界最古の木造建築が日本にあるのでしょうか。
その最大の理由は太古の時代より現代まで、日本列島が森林に覆われていることにあります。そしてこの森林の中で育まれた木工技術があり、それを列島の生活文化として継承し伝えてきた精神性があります。
旧石器時代(私はこれを旧木器時代と呼んでいます)より日本列島に棲んできた人々が共有してきたものに「木」があります。列島のほとんどは森林といってもよく、平野と呼べる広さは北海道の一部くらいで、平地は河川の海に近い猫の額ほどの地域がほとんどです。つまり森林の中で暮らしてきた人々こそが日本人なのです。
その中で連綿と絶えず伝え、継承されてきた「木の文化」は、世界に類例のない木造建築を保持させてきました。そのすがた・かたちのひとつとして象徴的なのが法隆寺ということになります。
先人は、この1万5千年の間、時の権力構造に変化が起きても、森林の中で暮らしてきた精神構造である「木による精神性」を変えることなく、列島の風土の中で脈々と次代に伝えてきたものといえます。
国境が陸続きの国々の歴史は、権力を握った者が前者の成した文化をことごとく破壊し、文物ばかりか子孫をも根絶やしにする歴史に見受けられます。
その国々の中で、日本列島に棲む人々は奇跡的にそれら諸々を保持し、今なお進歩発展の途上となっています。
我が国の何事にも和する精神性や、文物を作る高い技術力、鋭意工夫する創造性などは、森林と海洋がもたらした人心構造なのだと考えられます。太古の時代から受けついてきた物事をもって現在に生き、それをまた次代に繋げてゆく・・・。切実な暮らしながら素晴らしい伝統の継承といえると思います。
隣国の節度のない行動が目立つ昨今ですが、進んで防衛力を強化し、そして和する。
力なき正義はただの理屈になるため、かたちなき威圧感をいかに保持していくか、が、これからの日本列島の上に吹く美まし風を守る指針になるような気がします。
どの国もうらやむ縄文の頃からの風が、日本列島の森の上には吹き流れているのです。
(写真 法隆寺金堂 五重塔)
                                                                                                                                                                                                                            


2010年9月28日