日本のすがた・かたち

2010年9月9日
縮み志向

HP-1099.jpg小さきに有為の宇宙を写させて
狭きが幸と先人(さきひと)が聲

                                                            
日本人は、思いのほか広い住宅に住んでいます。
1979年のEC(欧州共同体)の報告書で「日本人はウサギ小屋に住んでいる」といわれ、以後私たちは狭い住宅に住んでいると思うようになりましたが、統計によると欧米主要4カ国の持ち家1戸当たりの床面積を比較した場合、アメリカの148㎡(44.4坪)に次いで125㎡(37.5坪)と決して狭くありません。但し、借家の狭さは際立っていますが。(国交省「平成15年度住宅・土地統計調査」)
衣食住の水準はその国の文化や経済などの国力を現わすといわれていますが、現代の我が国の衣食住は平成バブルの教訓を得て、世界に類の無い豊かな水準にあるのではないかと思います。
現代における日本人の暮らしは、欲を言えば切りがなく、先人は「上を見れば方図(ほうず)がない」と言っています。これは上を見れば切りがない、下を見れば切りがないという意味ですが、考えてみると、私たちは日本という国土の気候風土の中に住んで、水や森林に恵まれ、海山の食べものに恵まれ、日本語を話し、何千年も前からの生活の知恵に浴しながら、穏やかな暮らしを見守ってくれる神仏が身近にある暮らしをしています。
もしかすると、それぞれ我欲の強さの分だけ不平、不満、そして不足があるということなのかもしれません。もし、その欲を恵まれた生活が出来ているという観点に転換できたらどうなるのか。本当に恵まれた環境の中で暮らしていることを実感すると思います。
アメリカの住宅が小さくなっていく昨今は、住宅の広さよりも生活の充実を図るために家を小さくしてゆく、縮みへの移行期のようです。
経済的な理由もさることながら、日本人が永く工夫してきた生活への知恵を欧米諸国が借りだしたようにも思えます。
フランス語で書かれた「ウサギ小屋」の本当の意味は、都市型の集合住宅の俗称なので、日本の住宅がウサギの小屋のように狭いとの意味ではないのですが、日本ではこれを誤解したようです。
狭いと言えば、我が国ではもっと狭い、パーティー会場ともなる「茶室建築」が存在します。
この世界に誇るべき小空間は、もしかすると、これからの世界の建築のお手本となる可能性があります。
現代は省資源、経済性、そして省エネ志向。
日本人の充満していていながら縮むという志向は、これからの人類に大きな希望を与えるキーワードになるかもしれません。
先人は、この気候風土の中で、小さき狭き空間と大宇宙とを結びながら暮らしてきたようです。
                                                                                                                                                                                                                            


2010年9月9日