日本のすがた・かたち

2010年8月27日
やきしめ

HP-10831-1.jpg火の中で炎にもだえ異のものと
太虚は変える美ましすがたに

                                                            
土を火で焼いたものが焼物です。
現在では、日本列島に住んでいた人たちが、地球上で一番早く焼物を作ったといわれています。1988年、青森県の大平山元遺跡で見つかった土器が、科学的な年代測定から 1万6500年前(縄文時代前)のものと言われ、世界最古の土器ということです。
これは、中国や他の国で発見されているものと比較して、群を抜いて古いもので、この列島では発掘がすすむと、さらに古い焼物が発見される可能性があります。
私は30年ほど前から、茶事・茶会を催すために必要な道具を作ることにしていますが、その理由はふたつあります。
ひとつは経済的理由で、茶事を数多く催すには道具が足らないことです。
いまひとつは、茶事の趣向に沿った道具で客をもてなすことです。
これは大変楽しいことで、作った道具の巧拙はともかく、招いた方たちがこの茶事のためにと、喜んでくれることがあります。
後は道具の第一といわれる「床掛けもの」と「茶釜」のひとつもあれば、何とか面白い茶事・茶会を催すことが可能となります。
焼物は土で成形したものを窯で焼くだけの、“焼きしめ”が私の好みです。遣唐使が将来してから発達した、施釉や色のついた焼物も魅力がありますが、土が木による火の洗礼を受けて、段々と土から別なる物体である焼物として生まれ変わってゆく様は神秘的です。
そして、薪からできる灰がそれに降りかかり、想像を超えた色や肌を呈し、別なる物体になることは人智では図れない宇宙の意志のようにも思えます。
火山列島の我が国には、火と水と土と木と金がハイレベルで存在します。人々は縄文草創期からそれらを駆使してモノづくりをしてきたのでしょう。
私は土の焼物を作るたびに、大昔から変わらない先人の営みの永きを思います。
(左・丹波長茶入 右・伊賀瓢茶入 ) 
                                                                                                                                                                                                                            


2010年8月27日