日本のすがた・かたち

2010年3月5日
縄文のビーナス

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縄文の麗婦にのこる紋様を
文字の象(かたち)と驚きて見ゆ

                                                            
「縄文のビーナス」は美しいすがたでした。
この大型土偶は縄文中期(5000年~4000年前)のものといわれ、1986年に八ヶ岳山麓の長野県茅野市にある棚畑遺蹟から発掘されました。
当時の集落は、広場を中心にして環状に作られていることが分かっていて、この土偶はその広場の中の土坑と呼ばれる小さな穴の中に横たわるように埋められていました。
顔はハート形のお面を被ったような形をして、切れ長のつり上がった目、小さなおちょぼ口などで当時の美人顔を彷彿とさせました。また,耳にはイヤリングをつけたかと思われる小さな穴があけられていました。
腕は左右に広げられて手などは省略されていて、胸は小さくつまみ出されたようにつけられているだけですが、その下に続くお腹とお尻は大きく張り出し、妊娠した女性の様子をよく表していました。
像の全長は27センチ、重量は2.14キロで、頭は頂部が平らに作られ、円形の渦巻き文が見られることから、帽子を被っている姿とも髪型であるともいわれています。文様はこの頭部以外には見られませんが、私はこの紋様にくぎ付けになりました。実物を見て驚いたのです。
この紋様はどこかで見たことがある気がして、早速、調べてみました。
見たことがあったのは縄文人だったというアイヌの民族衣装を纏った古い写真でした。縄文のビーナスの頭に被っているものとアイヌの正装衣装の紋様が重なって見えたのです。
縄文人には文字はなく、アイヌ族も文字をもたないといわれてきましたが、なぜあのような不可思議な紋様があるのか、興味は増すばかりでした。
最近の研究では縄文人は思いのほか高度な生活習慣を身につけていたことが分かってきています。ビーナスの紋様は私の歴史認識に大いなる夢をもたらしてくれることになりました。
そして、我が国の古代文字といわれる『秀真伝』、『カタカムナ文字』などにはいまひとつ信をおくことはできませんが、ここに描かれた紋様(絵文字)は、1万5000年も前から使われていた古代文字の存在を、圧倒的な説得力をもって知らせてくれたようでした。
像は丁寧に作られていました。表面がよく磨かれて光沢があり、粘土は雲母が混じっているようで金色に輝いていました。神々しい国宝のすがたでした。 
この土偶は私たちの先祖の象であることは間違いありません。そして私たちもまた、後の世の人たちの先祖となります。
                                                                                                                          
                                                                                                                                                                                       


2010年3月5日