新之介文庫だより

2019年11月8日
句歌都々逸全集『緑の洞』第一弾 発売開始!

令和の幕開けにあわせて、句歌都々逸全集「緑の洞(みどりのほら)」の出版を企画しておりましたが、第一弾の「太田新之介の都々逸1」が完成しました!

今まで新之介さんが作ってきた俳句、和歌、都々逸は膨大な量になりますが、その都々逸の中からさらに選んだ一冊です。

新之介さんは、3歳の頃から父の膝の上で母が唄う都々逸を聞いて育ち、40歳の頃には伊豆長岡で熟練の芸者さんと都々逸の掛け合いを楽しんでいたそうです。
都々逸の名手とお互い即興で一つ唄っては一つ返す。
「都々逸には男女の情感がこめられている。これを唄うことでリズムと臨場感が出てくるんだよ。」とのこと。

男女の心の機微を即興でやりとりするなんて、まさに成熟した大人の遊びですね。

 

ページをめくっていくと、所々にマスコットキャラクターのタマが登場します。
着物を着てたり、こたつに入っていたり、色々なポーズのタマですが、これも即興で書かれているもの。

また、表紙や紙の質感にもこだわり、大きさもちょっとバックに忍ばせて、電車の中など気軽持ち運んで読めるサイズです。

表紙のデザインは、新之介さんの数ある裂地のコレクションの中からお気に入りの一枚を選んでいただきました。
19世紀のインドネシアのカインプラダ(印金更紗)という裂地で、新之介さんはこの裂地でお茶事に使う古帛紗も手作りして使われているそうです。

第二弾以降も都々逸、俳句、和歌と10冊にわたり続いていく予定です。
どうぞお楽しみに!

新之介文庫 日野美奈子

 

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近詠・句歌都々逸55

 

 

香立てて月のしじまに尋ねやる 先祖のその後如何に如何にと

 

黄昏て ツクツク法師 羊雲

 

秋分や いつまで嵐 這うヤモリ

 

ただ歩く 青柿の空 雲光る

 

設計の 楽しさに会い 栗を喰う

 

芒揺れ 川面に揺れる 我の貌

 

捨てながら 人生既に 秋の暮

 

〽︎ たかが人生成り行き任せ「ってね・・・」言ってたアンタが痴呆症

 

〽︎ お前百まで儂ゃ九十九まで「ってね・・・」言ってたアンタは認知症

 

〽︎ 飲み食い出すの一生だものアタシゃお悟りなぞ要らぬ

 

〽︎ 君に送った花束なのに 何で食べるのニコニコと

 

〽︎ 胡散くさいのその決め台詞 粋な足元覚束ず

 

設計は己れを映す鏡かと あの時の我明日の夢かと

 

去る時に 想い託して 眉の月

 

危機管理 過去なら出来る 出来ぬ明日

 

大風に 敵わぬまでも 屋根の星

 

いざさらば 移ろう刻に 別れ酒

 

秋の夜に 思いの丈の 独り言

 

道行けど 細まり続く 月の華

 

 


2019年11月8日