新之介文庫だより

2017年8月12日
近詠・句歌都々逸Ⅲ

 

リーンリーンリーン音に誘われて 月見酒

 

鈴虫や 羽を震わす 恋心

 

皆が皆 同じこととは思わざる 善し悪しのこと 雲の行方も

 

遠雷や 花火の夜の 淡い月 

 

「ピピピピ…と」アラーム鳴る頃仲直りしたら スネた時間が惜しくなる

 

カナカナカナ 夏の終わりを 耳で知る

 

星空に 問わず語りの 星ひとつ

 

ぶつからぬ 自動運転面白き 部屋ごと走る 日も遠からじ

 

来てみれば 人生妙味の下り坂 ここを跨げば 後はアクセル

 

老少は 不定なりやと 紅木槿

 

黄昏は 蝉の命を 閉ざしけり

 

花の色香にまた酔ってたら ツケはいやよと花が言う

 

故郷は いいなぁ海山 人の声

 

羊雲 未だ動けぬ 宝船

 

食うて寝る ただそれだけで終る夏 空飛ぶ鳥も 同じ定めと

 

我もまた 黄昏時か燃え残る あれもこれも 妖し好まし

 

湿原に色とりどりの花の路 我来た道の色もとりどり

 

甘いメロンに想いを重ね あの時触れた 恋の味

 

いつまでも ぐずつく小雨 断てぬ糸

 

また一人 浄土参りか 盂蘭盆会

 

 

 

 

句・歌・都々逸集『緑の洞』近詠抜粋

写真:先日の八島ヶ原湿原

 

 

 


2017年8月12日