イベント情報

2018年5月9日
逗子「新緑の茶事」

前日の大荒れの天気が嘘のような晴天日。
11時半の席入りに合わせ蓮客と駅で落ち合う。

寄付に入れば、小野田雪堂筆の万葉仮名なる「いろは歌」。
懐かしさに暫し瞑目。

白湯を受け、待喜庵露地に出る。
庵守の青モミジは陽光に映え、一同を迎える。
露地の風情はことのほか爽やかで、青苔が瑞々しい。

蹲踞で水を使い、躙口より席中に。
暗い床に一行物が掛かる。

「白雲深処掩柴扉」宗室(淡々斎)の端正な筆になる。
進んで炉に掛かる釣釜を見る。
5名の連客が付くと一呼吸置き、茶道口が開く。

「どうぞお進み下さい」
「失礼致します」
主客の挨拶。露地の風情、床掛物の問答に移る。

「截断人間是与非 白雲深処掩柴扉」

人間(じんかん)の是と非を截断(せつだん)して
白雲深き処柴扉(さいひ)を掩(おお)う

人間の字はニンゲンとは読まずジンカン。人の世の世間、世俗、巷の意。
柴扉とは雑木で作った粗末な庵のこと。

世俗の喧騒を離れ、雲深き山中にあって人間社会での是非、善悪、利害、得失、苦楽、愛憎などの相対的執われから離れ、世間の暗いニュースも、国会の混乱も、セクハラの話題も伝わってこない。あるのは静寂の中の鳥の声、風の音、席中の香りのみ。
喧騒の街中に住もうとも、大勢の中に交わっていようとも、心境においては主客共に人間(じんかん)の是と非を截断(せつだん)して白雲深き処柴扉(さいひ)を掩(おお)う境地でありたいとの庵主の思い。

一同意を汲み是深謝する。

初炭が始まる…。

(以下続く)


2018年5月9日