イベント情報

2018年4月7日
逗子の茶事

三年前、新築した茶室の名前を付けて、との要望がありました。
私が設計した茶室の名付けは数軒ありましたが、手掛けずに完成しましたので、というのは初めてでした。
ご厚誼を頂いていてお断りできない状況を考え、快諾しました。

庵号は「待喜庵(たいきあん)」としました。
待喜のいわれは「天来待瑞喜(てんらいずいきをまつ)」から採ったものです。
「天来」とは天から来たる、「瑞喜」とは喜びの瑞兆、という意味で、いつも私は設計をしながら、プランがまとまる兆しが天からやって来るように、と、それを待つ言葉にしています。

庵主が茶友との交流を重ね、その喜びの兆しをこの席で待つように、との願いからでした。
「待喜庵」と書にしたため謹呈させて頂きました。
そして茶席披きの茶事に正客として招かれました。

木の香漂う庵は良く工夫され、庵主自身が、これからどのようなお茶をして生きて行きたいのかを教えてくれる造りでした。
露地には植えられたばかりの青モミジが印象的で、モミジ越しに見える庵号の扁額は輝いていました。

私も一昨年の十一月に待喜庵主をお招きして「お祝いの茶事」を催しました。

玄関床 自書 短冊 「天来待瑞喜」
寄付  小野田雪堂詩書 「友到談古今・・」
本席床 清田保南老師 一行「随処作主」
茶入  志野肩衝 銘「天来」自作
濃茶碗 赤楽 銘「寿福」長入
茶杓  煤竹 銘 「庵守(いおもり)」 自作
添歌「待㐂なる庵の守の初紅葉 幾代も芽吹け主に寄り添い」樵隠庵詠
炉縁  桐霊芝喰い鶴金銀蒔絵  自作

露地の紅葉が客一行をお迎えしました。

先日、待喜庵主より茶事のお招きがあり、今月末に参上仕ることにしています。
茶の湯の行き着くところは茶事一会。
私にとってのイベントは茶事一会に勝るものなし。このようにして茶事でお招きし合うご縁を有難いと思っています。

庵主の待つ地は逗子。
逗子は私が20歳の頃住んだ思い出の街。
また思い出がひとつ増えそうです。

 

   楽しみは逗子の庵の青紅葉 また逢い見ゆを待つるこの時

 

写真:「樵隠庵」露地の青モミジ

 

 


2018年4月7日