イベント情報

2017年12月30日
名建築探訪

名建築・みがき隊の及川隊長がHPの「名建築探訪」に投稿しています。若い人たちと建築の精髄を探求できることを嬉しく思っています。

彼らはいずれ先人の為してきた建築の精華を体得し、また後の世に伝えてくれることと思います。

先人が営々と培ってきた日本建築の精華は、人類に大きな示唆を与えるはずなので・・・。

 


願心

 

本年の初夏、名建築探訪として、みがき隊事務局メンバーは講師の太田新之介先生にご一緒して奈良の東大寺へ赴きました。

国宝の南大門では、鎌倉期の大仏様の意匠特性を確認した後、皆で参道を少しずつ移動しながら門が一番美しく見える場所を探しました。

建築には必ず視点場というものがあり、設計者の考えに心を重ねつつ、門を通して見える大仏殿の見え方などから、その場を探し出す試みはとても興味深い体験でした。

さらに大仏殿金堂に進むと巨大な仏殿と仏像は、まさに世界遺産としての歴史と風格を放っています。私はその空間に身を置きながら、「我々には遠く及 ばない古人の偉業だ」としか捉えられませんでした。

しかし、太田先生は仏像や建築に込められた「願心」の大きさ、強さは現代の私達にも注がれていて、そして今の世でも同じく姿・形に現わす事ができると語られました。

どのような文化財であっても、時の財力と権力によって贅を凝らしただけの庭園や建物と、思想性が脈々と受け継がれ、高い美意識が結ばれて緊張感ある空間が今に残る庭園や建物とでは、おのずから決定的な差異があり、後者こそが「名建築」として本来の力を有しているといえるでしょう。

東大寺は歴史上、焼失などから三回復興されていますが、各時代に復興を求める発願者が現れ、極限られた人の崇高な信仰心が多くの誠心に伝播し、寄進建立された事を知りました。
それは東大寺が「名建築」としての価値を有していて、その思想が継承され、再興を実現させる働きを持っていた事に他なりません。

東大寺南大門にある高さ8mを越える二体の金剛力士像は、運慶一門の快慶を始めとする十数名がわずか二か月足らずで完成させたと伝えられていますが、その背景には二人の高く深い信仰心があったと言われています。
本年、良縁を頂き、奈良国立博物館で開催された「快慶展」と、東京国立博物館で開催された「運慶展」の双方に行く事ができました。

展示品という言葉は適当ではない、崇高で力漲る仏像の数々からは、二人の仏師の卓越した技能とともに、その中に込められた「願心」の大きさを実感しました。

太田先生は、人は物事を成そうとする都度、「願心」を打ち立てる事が重要で、そして「願心」なるものはうつろい易いため、消えないように不断の営みが大切だと語られています。

これからも名建築を探訪し、そこに込められた様々なメッセージを受け取りつつ、名建築・みがき隊の活動がより多くの方々とともに広がりを持てるように、来年に向け「願心」を立てようと考えています。

 


HP転載抜粋

http://migaki-tai.org/archives/1040

 

 

 

 


2017年12月30日