日本のすがた・かたち

2017年4月6日
あれから40年

IMG_3272.JPG先日、「MOA熱海保育園」を訪ねました。

門の前に立つと当時を思い出し、感慨深いものがありました。

丁度春休み中だったので、子どもたちの姿や声は聞こえませんでしたが、40年の歳月は感じられず、建物は経年による多少の劣化はあるものの、愛情をこめて使って頂いていると感じました。

 

40年余り前に設計を依頼された頃、私は独立して間もない駆け出しの建築家でした。

それまで公共建築物の類を設計したことがなく、なるべく顔や態度に出さないように振舞ったつもりでしたが、不安の毎日でした。

(果たして頼まれた保育園を設計できるのか・・・)

 

計画案をまとめるについて何をしたかというと、依頼者(施主)の要望を聞き、保母さんたちと打ち合わせを繰り返しました。また各所にある保育園を見学し、そこの良きところ、参考になるところを関係者と検討を過剰と思えるほど繰り返しました。

 

難関は給食を出す厨房でした。保育園の特色のひとつが自然食品による食育だったこともあり、調理長が妥協を許さない方だったため、合意を得るのに難儀をしました。

でもそのお蔭で自然食や自然農法に関することを学びました。

 

30過ぎの私に変化が起きたのは、設計に対する自分の姿勢でした。

それまでは自分という建築家が設計するのだ、という自負が強くありましたが、設計とは何処の誰がすることは余り重要ではなく、造られた建築がどのように使われ、永く時間を生きて行けることが重要なのだ、と思うようになりました。

そのような考えに至ったのは、この園の創始者の理想の高さに触れたからだと思います。

「ただ己の良心に従い、この世に存在してもよいと思われる建築を造る」。

自分の心がこの一点に集約された時、私は初めて設計の道標を得たと思いました。

「自分の理想とする建築家を目指して生きよう!」そう決意した建築でした。

 

IMG_3271.JPGあれから40年、理想とする建築家には程遠く、まだまだこの先は長いと思いながら、同時に理想像には到達できないことも納得しているこの頃です。

 

「愛」をテーマにステンドグラスをデザインし、ステンド作家と共同で製作した階段ホールの窓が当時のまま迎えてくれました。

建築家を目指してきて本当に良かった、と思った一日でした。

 

園はこの四月からMOAあたみ幼児学園と名称が変わり、熱海初の認定こども園「MOAあたみ幼児学園」になり、0~2歳児の預かり保育、子育て支援事業を新たにスター

トしたとのことです。

子どもたちの元気な声がきこえてきそうです。

 

 

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熱海初の認定こども園 MOA保が「幼児学園」に

001_size6[1].jpg■0~2歳児受け入れなど開始

熱海市海光町のMOA熱海保育園(森本元昭園長)が1日、市内初の認定こども園となり、名称を「MOAあたみ幼児学園」に改める。0~2歳児の預かり保育、子育て支援事業を新たにスタートする。

 同園は保育園と名称にあるが、3~5歳児の幼稚園教育に取り組んできた。保育園・幼稚園の機能を併せ持つ「認定こども園」となることで、0~2歳児保育を開始する。併せて開園時間を8時間から11時間に延長し、日数も増やす。定員は従来と同じ60人。職員は12人から16人に増やした。

 子育て支援ではアドバイスや、情報提供を行う。事前連絡があれば給食も提供する。

 独自の設定だった保育料もシステムも変更し、これからは他の保育園・幼稚園同様に収入に応じた金額となる。

 幼児教育の充実を目指し、待機児童解消など市のニーズに合わせた教育を提供するため認定を受けた。認定こども園には4タイプあり、「MOAあたみ幼児学園」は地方裁量型。市と相談しながら地域のニーズに合わせ運営していくため、市との連携がこれまで以上に求められる。

 新園長となる佐伯弘美さんは「MOA熱海保育園として積み上げてきたものを土台にして、新たにスタートする。40年間続けてこられたのは地域の協力があってこそ。今後も変わらず協力を願いたい」と話した。

 

【写説】正門に新名称プレートを掲げ1日にスタートするMOAあたみ幼児園

 伊豆新聞 熱海版 2017年04月01日

 


2017年4月6日