日本のすがた・かたち
元日は神仏のことから始まりますが、2日から筆をもち書初めなることをします。
同時に私が長いこと続けているのが鉛筆削りです。
新しく2Bを始め4B、6Bの鉛筆を4本ずつ削り、これからの書物や図面、スケッチを描くための備えをします。3年前から10Bも参入しています。
短くなった鉛筆はホルダーを添え3センチほどになるまで使います。使用不可能になったものは捨ててきましたが、近年は何となくとっておくことが多くなりました。
20代から持ち始めた鉛筆の数は今年で何本くらいになったのか、数えたことはありませんが、相当な数だと思います。その鉛筆の数だけ建築のスケッチばかりではなく、絵や文を書いてきたことになります。
現在、Sのプロジェクトで「茶の湯のステージ」造営事業に取り組んでいます。
この計画の目的は、日本人の優れた美しい記憶をかたちにしようとするもので、先人が縄文期から伝え、今日まで継承されてきた木造建築の粋を、歴史にてらしながら造り、未来に生かしたいとするものです。
昨今、「和の文化」が世界的に注目されています。
これは必然的なことで、我が国の若者たちの目が「和」に注がれてきたということです。
日本は良質の発酵食品のごとく、他国にない普遍的な精神が育つ風土と人の気質をもっています。これが注目を集めることになるのは自然の流れです。
言語をみてもそれが分かります。
漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、英語などを駆使した複層の言語表現ができる民族は他にありません。それだけ高度な知をもち、穏やかな気候風土に育まれてきた日本人を世界の人たちがお手本にしない訳はありません。
「茶の湯のステージ」造営は、和文化の結晶したすがたを木の建築で造り、次代の若者が活躍し、世界の人々と交流できるようにと願うものです。
今年もBの鉛筆がスケッチを始めました。
鉛筆の線は未来に向けた先人の思いのようです。
“漁夫生涯竹一竿„
禅語、漁師の生涯竹(たけ)一竿(いっかん)を借りた私の句は。
“建夫生涯鉛筆一本„
(建築家の生涯は鉛筆一本)
新しい鉛筆は、私といつも一緒です。
(スケッチ 造営計画の平面イメージ)