日本のすがた・かたち

2012年10月18日
伊勢神宮

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 来年は伊勢神宮の式年遷宮です。

20年ごとにすべて建物を造り替える我が国建築史上最大の神事です。

また、作り替えは建物ばかりではなく、天皇家の御神宝、調度品、衣装類から什器備品に至るまですべてのものを新調するものです。

私は20年前の式年遷宮に伊勢神宮を参拝してから、改めて神宮建築の歴史的定説に疑問をもつようになりました。結果、疑問を整理しながら、自説を打ち立てることをするようになり、今年末に書いてきたものをまとめ本として出版することにしています。今、その最後の編集にあたり時間との闘いをしている最中です。

この20年間の書きとめ行為は、建築家として自問自答してきた忘備録のようなものですが、伊勢神宮の謎はその柱となってきたものです。建築家を志した20代後半から、ずっと「建築とは何か」を考えてきた、いわば一生の伴侶となってきたようなものです。

伊勢神宮は私に「木の建築」を教え、同時に、それにまつわる歴史学のいかがわしさも教えてきました。私が建築を学び始めた頃の学説によると、伊勢神宮の最初の建築は現在のすがたとほぼ同じだった、とのことでした。私も20年前までは何も疑わずに学んでいました。それが、伊勢神宮が創建された千三百年前からではなく、幾度も変わり、明治時代に現在のすがたとなったことが分かってきました。

そのように思いたい権威者たちが虚像を作ったようです。 

現在、縄文時代から遺こる我が国の建築史は、遺跡発掘ごとに書き替えることになり、年々、明治時代からの学説や通説が覆されています。伊勢神宮の建築史も書き直される時期がきているようです。

天皇家の祖神天照大神を祀った『伊勢神宮』の謎に迫った20年は、私の日本史の謎解き本ともなりました。

これで私も、本当の建築の設計ができるようになれたかな、と思う昨今です。

 

  ”我は未完の太夫と称す ブラブラ行くは生まれつき” (都々逸)

 

(写真 伊勢神宮 修祓 )

 

 


2012年10月18日