日本のすがた・かたち

2010年6月13日
御神宝

HP-10612.jpg宇宙(そら)駆ける
「はやぶさ」に見る見事さは
手に神をみるわれらが仕組に

                                                            
圧倒的な職人技でした。
平成25年の伊勢神宮式年遷宮に奉納する御神宝の製作過程を拝見しました。
奉納する二振りの太刀拵えは、20年ごとの遷宮(造りかえ)に合わせ、新らしくまた作りかえられます。
20年前も、同じ作りかえの太刀の工程を拝見しました。
「センセ、伝統というものは古いものを守るものと違いまっせ、新しいものごとを積み重ねることですねん」
当時、荘(かざり)金具製作の第一人者であった先代の森本安之助氏はそういいながら、私の眼の奥を見ました。その鋭い眼光は今でも覚えています。
(この御仁は、何百年というような先の時間を観ている…)
そう感じたものでした。
昨日、目の前で太刀の柄(つか)部分の銅板を細工している職人の手の、指の美しさに私は見惚れ、見事な細工はさておき、暫しその手の、指の動きを眺めていました。
(ああ、こうして先人は営々と技術を繋いできたのだ…)と。
その金具に刻まれた文様は、民族の血の証のようなメッセージを私に送っているようにも思え、また日本人の手の、指の美しさを見せてくれていました。
二振りの太刀荘りは3年後伊勢神宮に奉納されます。
20年毎に繰り返されてきた、先人からの手仕事の結晶です。
7年の旅を終え「はやぶさ」が地球に帰還したようです。
日本の職人技は確かな文化に支えられ、世界に冠たる構想と質を継承してきているように思います。
それを裏打ちしている精神こそ、大昔から積み重ねてきた先人の英知といってよいでしょう。
自らは大気圏で燃え尽き、赤子を地球に産み落とすかのようにして消え去る・・・。
46億年から繰り返されてきた子孫への営みそのもののようです。
伊勢神宮式年遷宮に奉納する太刀の見事さも、地球と火星の間の小惑星「イトカワ」の往復を果たした「はやぶさ」の快挙も、同じ日本人の手に、指に成る、遺伝子作用だということを子孫(産みの子)たちに伝えたい。
そう思った一日でした。
明日の新聞の一面は、なぜ人間が感動を覚えるのか、という答えを出していることでしょう。
(写真:左下側から大気圏に突入し、輝きを放ちながら地球に帰還した「はやぶさ」の最後の軌跡=2010年6月13日、和歌山大宇宙教育研究所提供)
                                                                                                                                                                                                                            


2010年6月13日