日本のすがた・かたち

2008年9月12日
狭き部屋

hp-33.jpg君知るや
茶の湯の席の広きこと
大和のすがた容れて余れり

畳(たたみ)3枚の茶席を3畳の席といいます。
ここで客2、3人を招き茶事をします。簡単にいえば、この狭い部屋で飲み食いし、最後に濃いお茶を皆で飲むという行為です。今日のものは桃山時代から400年ほど続いてきた儀礼儀式といわれています。
不思議なことに、日本に憧れる外国人は、必ずといっていいほどこの狭い空間に入りたがるといわれます。そして、余りの狭さに驚くそうです。実は、この狭い部屋は只の部屋ではなく、日本なるものが隅から隅までつまっています。それを知りたいのだろうと思われます。
一連の茶事をおこなう施設の茶室には、日本のすがた・かたちが濃密に漂い現れていて、目的は客をもてなすためだけのものですが、その中には遠く縄文の頃から続いているかた(作法)が充満しています。世界に類例のない、かたの結晶といってもいいでしょう。
私はこの狭い部屋で展開される人間の所作に、日本人が培ってきた美しい生活への憧れが横溢していると見ています。かたちのない想いから、所作動作のかたをもってかたちあるものを造る。それを連綿と続け繋げている民族。人間の精神性の高さや品格は芸術を持ってしか得られない、とは先人の言ですが、日本人はこれをひそやかに巡る季節の中で育んできています。
今、狭き部屋の中で、祭りを含めて生活のかた(作法)を生みつづける日本人の特性を、今更のように思い起こし、なぜ他国から、日本人がお手本にされることが多いのか、との思いを巡らせています。


2008年9月12日