日本のすがた・かたち

2018年10月2日
青春の日々

「じっとこうして」
じっとこのまま 離れないで
もっと こうして 私を抱いて
夜の闇に 恋をまかせて
あなたの熱い 吐息の下で
けだるく あえいで 肌もあらわに
私の生命を 燃やしたいの
何も云わず みんなゆだねて
朝まで このまま 離れないで
モナムール

「ラ・ボエーム」、「ラ・マンマ」、「世界の果て」、「じっとこうして」などの大ヒットを生んだ、フランスのシャンソン歌手シャルル・アズナブール氏が1日亡くなりました。
訃報を聞いた私は、青春の日々が去ったと思いました。
「ラ・ボエーム」1955年、「じっとこうして」1965年、シャルル・アズナブールの作詞や作曲で世に出て、いち早く銀座の「銀巴里」で美輪明宏や金子由香利たちによって歌われていました。アズナブールの名を知ったのもこれらの歌からでした。
以来、シャンソンは私の青春を彩り、中でも「じっとこうして」は私の官能を刺激し、今でも口ずさんでいます。
(亡くなったか…、青春が潰えてゆく…)実感がありました。

 

人生時間は人それぞれに在り、それぞれのすがた・かたちがあります。
生きている間の人生時間は自分だけのものであり、貸し借りはできません。
過去と人の性格は変えられないとは先賢の言。ならば折り合いをつけて生きて行く他はなく、その折り合いの付け方を励まし、支えるのが文学や歌のような気がします。そして人品を高見に誘うのは、美しさの漂う緊張感…。

この日の朝、ノーベル賞を受賞した本庶佑氏の人生訓を聞いて、「今ココ」の自己を生きている人がいる、アズナブールと同じ、まるで禅の高僧のようだと思いました。
「好奇心と道連れ、人の言は疑ってかかる」、とはけだし名言。
40数年前、建築家を志し、何よりも自分の眼を信じて生きてきた道筋がこの言に似ていました。

今日も「じっとこうして」を唄い、建築の道連れだったことを確認し、アズナブール氏の冥福を祈りました。

 

写真:歌うアズナブール

 


2018年10月2日