新之介文庫だより

2020年2月23日
句歌都々逸全集『都々逸』第2巻発刊

句歌都々逸全集『緑の洞(みどりのほら)』

全10巻の内の『都々逸』第2巻が発刊となりました。
第1巻と同じく、都々逸236唄が納められています。
太田新之介の生きた歴史が手に取るように蘇る一作だと思います。

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  受け継がれていく都々逸の遺伝子

このたび『緑の洞』都々逸集は第二巻の運びとなりました。

著者は、三歳の頃から母が都々逸を唄うのを父の膝の上で聞いて育ち、四十過ぎには熟練の芸者たちと都々逸の掛け合いを楽しんでいたとのことです。

「都々逸には男女の情感がこめられている。これを唄うことでリズムと臨場感が出てくる。」と著者が言うように、私にとっての都々逸の印象は、男女の心の機微を即興でやりとりする、まさに成熟した大人の遊びというものでした。

しかしそれだけに留まらず、私が編集の傍らで見聞きしてきた、建築家、作家、茶人としての太田新之介の日常が生き生きと描かれているように感じました。

建築家として壮大な構想を前にして自問自答している姿、茶事に向けて心躍らせながら準備に勤しむ姿が目に浮かびます。

咄嗟の判断力や、ユーモアのセンス、文章や考え方にも緩急や起承転結といったリズム感を大事にすること、苦しみや悲しみでさえもユーモアで包み込んで昇華させてしまう著者の考え方や行動の原点には、都々逸的な遺伝子が受け継がれ流れているのを感じます。

都々逸をはじめ俳句や和歌も日々新作が生み出されています。ぜひ著者の人間味あふれる都々逸のリズムを味わっていただければと思います。

日野美奈子(第2巻より)

 


2020年2月23日