新之介文庫だより

2019年10月2日
近詠・句歌都々逸52

 

今宵また 頂きビールで 有難や

 

焼鳥の 焦げた竹串 宵の口

 

風吹けば 太古の匂い 山に神

 

下地窓 揺れる葦簾に 秋立ちぬ

 

小間席や 脚の痛さに 茶をこぼす

 

茶を啜り 幾許の刻 堪能す

 

花を入れ 人待つ香煙 朝座敷

 

夏草の 匂い懐かし 彼岸花

 

月末に 芙蓉や急ぐ 種作り

 

早秋や 蝉の骸の あちこちに

 

あと僅か ツクツク法師 断つ命

 

風狂う 高温多雨の 散歩道

 

辛ければ なお燃え急ぐ 曼珠沙華

 

夢一夜 哀しみ連れて 夜半の月

 

筆持てば 彼のひとの顔 染めし秋

 

秋風に 揺れる風鈴 はずす朝

 

設計に 裏切られては 秋の空

 

いま茶室 設計果てなし ウロコ雲

 

山に在る 月を眺める 庵かな

 

神通の 力与えよ 月天子

 

 


2019年10月2日