新之介文庫だより

2016年12月11日
夫々の思い

IMG_2545.JPG新之介文庫の日野です。

 

去る11月28日、佐々木広志さんの追善茶事がありました。

 

樵隠会の柴山崇志さん、市川和芳さんをご亭主に、佐々木さんゆかりの方々13名にお集まりいただきました。

太田新之介先生は残念ながら高熱のため欠席となり、正直不安もありましたが、佐々木さんもその場で一緒に楽しんでいるような、暖かいひとときとなりました。

 

新之介先生は、折にふれ「人生の最大事は邂逅である」とおっしゃっていますが、その言葉をかみしめながら、佐々木さんとの思い出が走馬灯のように蘇っていました。

 

初めて佐々木さんとお会いした日のこと。

新之介先生のお宅へ連れていっていただいた日のこと。

初めてのお茶事のときには、緊張の中、佐々木さんが横にいて下さり、床やお道具の拝見の仕方やお料理の頂き方など教えていただきました。

水晶殿ヒストリーの講演会を企画したときのこと。

あるときには、「困難があるほど燃えるんだ!」、とおっしゃっていました。

 

いつも細やかな心配りとユーモアを忘れない、安心感と情熱がありました。

 

佐々木さんと出会っていなければ、新之介先生とも、このお茶事でご一緒させていただいた方々たちとも出会うことがなかったと思うと、本当にありがたいという思いが沸き上がってきます。

そして、こんなとき佐々木さんだったらどうするのだろうか、と問いかけることも多々あります。

 

当日は参加できないけれども遠くからお祈りしています、というお声を寄せて下さった方たちもいらっしゃいましたので、

亭主の柴山さん、唄を披露していただいた一江ウタカさんにお寄せいただいた感想を紹介したいと思います。

 

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佐々木廣志様の追善茶事を終えて

                                          柴山崇志

先般我が樵隠会主催で昨年12月不慮の事故で他界された佐々木様の一周忌追善の茶事を開催致しました。

皆様にご案内申し上げましたところ当会の主旨に多数の方々の賛同を得られ11月28日月曜日、三島 太田新之介邸 「樵隠庵」にて実施致しました。亭主は太田社中・ 市川和芳氏とわたくし柴山が協同で勤めました。

 

開催日直前に正客予定の太田新之介先生が急に入院と言う事態が生じ、一時は開催も危ぶまれるところでしたが、佐々木様の一周忌のこの時期にすべきと決行と致しました。

 

茶事に精通されている 新之介先生ご不在で席中をうまく取り仕切られるか皆様の佐々木様への思いをまとめ天まで届けられるか等々不安だらけで当日に臨みました、

 

そんな緊張感に包まれ皆様を本席に招じ入れお顔を拝し乍ら佐々木様の思い出話をしているうちにホッと温かな気持ちになりました。

 

その後、仏師森田彩乃様作 聖観音立像をご本尊とし誦経後、KNOB(中村亘利)様の荘厳な奉納演奏、一江様の天に吸い込まれて行かんばかりの歌と本会の佳境を迎えたその時、皆の気持ちが佐々木様への鎮魂の思いにまとまった様な雰囲気の中に居ました。

 

この時わたしは拙い亭主ではありましたがこの茶事を企画し実行できた事、賛同していただいた皆様が其々の思いを胸に参加して下さった事への感謝の念に駆られました。正しく 一期一会 今回の茶事を終えて今 余剰残心の境地に身を置きたい心境です。

 

茶の道とは何と深遠か・・・ 強く深く感じた茶事でした。 合掌 

(しばやまたかし)樵隠会メンバー

伊豆修善寺「柳生の庄」調理長

 

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IMG_2551.JPG初めてのお茶事

                                          一江うたか

先日、佐々木広志様の追善供養茶事に伺わせて頂きました。

お茶事の経験の無い私が出席して良いものかと戸惑いながらも、お招き頂いた事をとても有難く思いました。

 

庭の待合にて、ふと目にとまった石畳の上のひとひらの紅葉。

蹲にて手口を清め、歩を進めてゆくと俗世間から聖域へと入ってゆく緊張感に、背筋が伸びました。

 

床の間に飾られた、太田洞水老師様による「南無釈迦牟尼仏」の掛け物 〜

そして、仏師森田彩乃様によって彫られた聖観音菩薩像 〜

イダキ奏者KNOB様の魂の響き 〜

 

炉に炭が継がれ、部屋中に拡がる。

芳しいお香の香り 〜

 

ご亭主柴山崇志 様より語られた、太田新之介様の佐々木様に手向けられたお言葉に涙し、その後、この大切なお席にて唄わせて頂きました。

 

シュンシュンと湯の沸く音が心地良く、目を瞑り、その音に耳を傾けていると、「心で見よ、心で感じよ」 そんな言葉が響いてきました。

市川和芳様によるお点前は本当に美しく、緩やかな川の流れのようでありました。

 

時の流れは見る事も、触る事も出来ませんが、茶事により、その流れに触れ、体感させて頂いたようでした。

締めすぎず、緩めすぎず丁度良い塩梅 〜

その、何とも言えない心地良さは、初めての体験でした。

 

 

運ばれてきた丁寧に作られたお料理。

この日の為にご用意された、器や茶道具の数々…。

無の世界から静かに語られるおもてなしの心が、身体中に沁み渡りました。

 

最後に柴山様より唄われた、「南部牛追唄」は、佐々木様も一緒に唄われているように感じました。

 

本当に素晴らしいお茶事でした。

皆様の御心に触れ、心に灯った、おもてなしという光をこれから大切に温めて行きたいと思います。

(ひとえうたか・シンガーソングライター)

                         

 


2016年12月11日