新之介文庫だより

2013年1月7日
『水晶殿改修記』-11 控之間のあかり

22.jpg新之介文庫の佐々木です。

隧道を通り水晶殿に進む中心線は、控之間の中央に繋がります。この部屋の目的、使い方については創建当時のことを思いながら考えると、多くの問題を整理する必要に迫られます。

造営主はなぜこの部屋の名称を「控之間」にされたのか。どなたの控の部屋になるのか。ご自身だったのか、VIPのための部屋だったのか。改修前は和室に床の間がついていて、茂吉翁は生前、ここに泊まられている。

太田は、当初の設計図の床仕上げがジュータンになっていることに注目し、それが畳敷きになったいきさつを調べた。その途上、部屋の中心を扇の要とし、扇を広げた線を円形ホールの外周であることを発見しました。水晶殿の中心は控之間の中心で、そこを隧道中心線が指していた。

IMG_0014.jpg天井にある「あかり」もそのひとつ。建築家は、照明器具のデザインから着手。

この建物の特徴を考えた時、最もふさわしいかたちを追求していくと、特注対応しかない。かなり早い時期から、この構想に基づき、計画が進められましたが、過去、このプロセスに協力した照明のヤマギワとの交流がここでも始まりました。担当の堀田馨さんは国際照明デザイン賞を受賞した「禅のあかり」を生み出した主要スタッフ。

IMG_2013.jpg創建時の時代背景、造営主にまつわるものを取り入れるなどしながら、デザインを固め材料と色彩を選び、模型をつくる。そして試作品を吟味し、完成品にこぎつける。そこには多くの人の英知が結集され、これこそものづくりと言える、妥協のない工程を経ることになります。

控之間の照明設計は建築家のスケッチに基づき、ヤマギワの佐藤隆さん、田附冬樹さんが担当。鋳物製作は高岡市の(株)能作の能作克治さんで、エッチングガラスなど全体製作は台東区のシスター照明(株)の清水裕二さんが担当した。百年先を見た器具は、高度な技術を要した。

この器具は、出来上がるまでに施主側の論議の的となり、不採用となる直前まで行った、紆余曲折のもの。開発関係者は一時、困惑を隠せなかった。この件はまた詳しく書く予定ですが、難産の末にできたものでした。

玄関ホール、廊下の照明、「宝珠」は「瑞雲」としてステップアップし、木とシックイの空間を照らしています。

 (写真上 完成した照明  中 鋳物デザインの打ち合わせ(高岡市) 下 実験風景(東京))

 

 


2013年1月7日