新之介文庫だより

2012年12月11日
『水晶殿改修記』-7 耐震調査

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新之介文庫の佐々木です。

静岡県は全国でも早くから、地震に対する研究も、そして対策についても、かなり進んでいるといわれております。

水晶殿建設は、昭和29年。その当時は、耐震という現在のような考え方はありませんでした。しかし、水晶殿の建物の目的、公共性を考えた時、相応のチェックと対策の必要性は、当然のごとくありました。そこで、どこの施設でも行われている、耐震診断なるものを水晶殿でもやる事になりました。

大手ゼネコン竹中工務店が担当し、太田新之介が監修と可否の判断を委ねられました。

結果、耐震上問題がある、という予想を超え、高い耐震性を有する建物と判断されました。2007年5月のことです。

詳しいことはまたの機会に書きますが、耐震補強の必要性があるのは0.6という基準で、予想は0.3というものでしたが、診断結果は0.9~2.3という驚異的な数値でした。

50年以上の歳月を経ていること、建物の劣化という点などを除けば、実に合理的に創られている・・・あらためて造営主、岡田茂吉翁のすごさを感じます。

この耐震診断のあと、改修工事に着手することになったわけですが、国や静岡県の耐震基準をクリヤーし、再生する水晶殿の外観の美しさを損なうことなく、という前提で計画を進めることになりました。建物の骨格を決めるプロセスは実に複雑で、しかも多くの規制があり、「再生」という仕事の難しさがあり、まさに建築家の姿勢と力量が問われる、という風に、私は思いました。

後でわかったことですが、太田はこの頃すでに、造営主との問答を始めていました。それから6年、それは修行僧の雲水のような毎日のようだったと想像しました。「建築は恋愛だ!」という新たな毎日が始まったのです。

この頃の太田の和歌。

  ” 新玉の風たおやかな心地して なつかし宇宙(そら)の君に会うかな ”

 

 

 


2012年12月11日