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2019年12月10日
佐々木・唐津

お茶の世界では、古くから「一楽二萩三唐津」という、抹茶茶碗の格付けがあります。
1位が楽焼(京都)、2位が萩焼(山口県萩市)、3位が唐津焼(佐賀県唐津市)で、「一楽・二萩・三唐津」といわれてきました。
他に「井戸二萩三唐津」といわれることもありますが、唐津だけは両者の中に入っています。
楽焼は、わび茶の世界を完成させた千利休が創案し、楽家の初祖の長次郎に茶碗を作らせたのが始まりの茶道用の焼物で、すでに400年以上の伝統があります。歴史からして、楽茶碗は茶道(特にわび茶)にぴったりで、茶人好みの最高峰といわれます。楽家代々の名工、天才本阿弥光悦などの作品が有名です。

 

萩焼は400年以上の歴史があり、茶陶として優れています。その土味、素地の景色、釉薬など、古い朝鮮茶碗に最も近く、「萩の七化け」といわれる変化が生ずるため特に茶人に好まれています。

唐津焼は歴史が古く、斉明天皇の時(655~661年)に、神功皇后の三韓征伐の際に連れてきた高麗小次郎冠者が陶器を作り始めたのが最初といわれています。唐船の出入りする港が近くのたま唐津という地名になり、さらにこの地方の焼物の名称になりました。
製品は多岐にわたり、九州地区では、焼物のことを唐津物と呼んでいるくらい代表的なものです。絵模様のあるのを絵唐津は1590年頃までに完成したといい、多くはシンプルでモノトーンの絵が代表的です。

志野、有田、楽、信楽、伊賀、備前、丹波、萩などの作陶遍歴を重ねてきた私には、唯一、唐津がなく、何時かチャンスがあればと思っていました。
それが、先日、陶芸家の佐々木泰男さんが土を持って来て頂いて、「今度、唐津をやりますので、いかがですが?」といってくれました。(チャンス到来!)

唐津物は少し持っていますが、茶事でこれといってお出しするものはなく、縁のないものと思っていたところ、今春にお世話になっていた岐阜の青山千架夫さんが突然来訪し、西岡小十作の銘「瑞雲」をご恵贈頂きました。銘書きは細川元総理です。
唐津には珍しい高格の一碗で、大層気に入りました。その唐津物がこの度佐々木さんの窯で焼かれることに・・・。ご縁としかいいようがありません。

 

佐々木さんは「焼締め・萩」「焼締め・志野」「引出し・丹波」を完成させ、そして今回は「焼締め・唐津」に挑戦することに…。

私はひとりの陶芸家により、日本のやきものに新たな一頁が加えられようとしているのに便乗させて頂き、樵隠庵好みの唐津ができるといいな、と思っています。

また、次回の茶事が楽しみです。
どの様な茶杓を添えようかと、今からソワソワしています。

 

写真:紫色に染まる「佐々木・萩」 2019年自作

 

 


2019年12月10日