新之介文庫だより

2019年10月25日
近詠・句歌都々逸54

 

人知らず 独り遊びの はひふへほ

 

頬寄せて 線香花火 秋の暮れ

 

行き会いの 空に半月 星ひとつ

 

蝉絶えて なお夏絶えぬ 木蔭かな

 

文月に 去年の便りを 広げやる

 

ああ明日も このままであれ 闇の風

 

西方の 夕暮れ睨み ビール注ぐ

 

人の世の 儚き運命(さだめ) スルメ喰う

 

近頃の 会いたき人や 影薄し

 

茶を喫し 何時かの笑顔 探す朝

 

道端の 花一輪に 秋の空

 

野仏を 拝む向こうに 富士の峰

 

散歩する 鮎止め橋に 鯉の群

 

滔々と 流れる川に 蝶や舞う

 

設計や 助人のない 舟戦

 

仮寝して 深更月下 設計す

 

真理あれ 孤月に問て 手をかざす

 

君知るや 葡萄の房に 子守唄

 

彼の女(ひと)の 笑み思い出に 波の音

 

あの頃は たわわなミカン 青い海

 

 


2019年10月25日