イベント情報
「かあさんが夜なべをして手袋あんでくれた…」。
懐かしい童謡です。
私も何時の頃からか夜なべをするようになり、深更に及ぶこともあります。
先日、古帛紗作りに専念しました。
折々、焼物や茶道具類など、必要に応じて色々なものを作りますが、この度は裂地を用いての裁縫でした。
裁縫は意外と上手で(自画自賛)子供のころから得意でした。細工物でも布物が好きなのは、布のデザインや文様に託されたメッセージに惹かれるところがあるからだと思います。
また、幼少期に玩具という代物がなく、何でも自分たちで作って遊んでいたことが、生涯にわたり役立っていることを実感します。
我が国の名物ものといわれる裂地には長い歴史と物語があり、金襴、緞子、錦などの絹物から綿、麻、芭蕉布まで、織物の奥行と幅を感じさせる工芸品は世界に誇るものになっています。
それに加え、私の好みは世界各国に作られている織物で、とりわけ東南アジアやインドの更紗です。その国の更紗には民族の香りが織り込まれていて、気候風土や歴史による違いを生きてきた人たちの匂いを感じます。
建築も同じことで、建築を知るには、その国の風土や歴史を下地にして、人々がどのように生活して来たのか、これに学ぶことが必要です。
「茶事を知らずして茶室は設計できない」、というように、いくらデータを形にすることに長けていても血の通った建築を造ることができません。裂地を知ることは建築を知ることに通じる・・・。
古帛紗は何年か使った後で茶入の仕覆に転用できます。
これは結構楽しいことで、自分の好みの育成に力を発揮します。
私は気に留まると、人の着ているものから、古着まで転用を考えますが、今回は真新しいインド製のエプロンを解体加工し、古帛紗に仕立てました。私自身が茶事で使うものと、親しい人たちに贈るためのものです。縁あって、お茶を始めた女子高生たちに贈呈したら喜ばれました。
千家十職の袋物師ではありませんが、夜なべジジイも乙なものです。
「ジイさんは夜なべして古帛紗作ってくれた…」。
今まで作った古帛紗およそ90枚。
この独り遊びは止められそうにありません。