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作品集より転載です。
1.丹波引出し茶碗 径 12.7 高 8.0cm
今年の正月に富士川の窯から出た茶碗のひとつ。茶碗は全部で6個出来たが、使えるものはその中の3つである。
丹波の原土を使い、焼成の途中で窯から引き出したもので、火の玉のようになっているものを一気に冷水に入れるため、割れやゆがみがでるものもあるが、この茶碗は想像以上の出来栄えになった。
凛とした姿が好ましい。
2.丹波茶碗 径 13 高 8.2cm
この茶碗が窯から出てきたときに胸がときめいた。
良くぞ焼けてくれたと思ったものだ。
全体の姿と薪の灰が溶けて出来た景色は美しく、申し分のないものだった。
窯出しされた多くの作品の中でも王者の風格があると、内心自賛した作だった。
帰参し、これを浄め、早速お茶を点ててみた。
気分が良い、とは、この時だ。
楽の初代長次郎作を持ったことがあるが、志野なども含め桃山時代の茶碗は総じて重い。
重い茶碗の長所は、濃茶を練る時に発揮される。安定して点てやすいものだ。
いつの茶事に使おうかと、今から楽しみだ。勿論濃茶の主茶碗である。
3.丹波茶碗 径 13.3 高 7.8cm
大振りではあるが、少し口辺を開きいびつな作りとした。この茶碗は内外とも削りを施し、重くならないものとした。
窯の中に置く位置で焼けの景色が変わる。
溶けた灰が少しかせたているのが良い。
濃茶、薄茶の主茶碗に使えるものとなった。
(さあ、銘を何と付けようか…)
4.黒泥肩衝茶入 径5.9 高7.8cm
黒泥と呼ばれる陶土は真っ黒な土でねっとりしたものである。
この黒泥で焼成したものは、焼く時に窯の中に置く位置で変化し、様々な表情をみせる。
大きめに作ったつもりだったが、焼き上がりは固く締まり小振りながら重く感じる。
艶のある黒の肌にゴマが降りかかり、得もいわれぬ風情を醸し出している。
黒泥は丹波と同じく何度も作ってみたい焼物である。
5. 丹波肩衝茶入 径7.0 高9.2cm
両手で粘土を細く紐状にして重ねてゆくいわゆる紐作りの茶入である。
紐の跡をそのまま見せようとしたのであるが、ややもするとダサい感じが出る。
焼け方が良かったせいか、正面にグリーンの塊が出て景色となり、幾重にも重なった地層から透明な水塊が見えるようにも感じる。
この茶入は前回の窯で焼いたものだが、着せる裂の良いのが見つからなかったので、そのままにしておいた。
先年、タイに渡航した折にラオス国境で山岳民族から入手した古布が仕舞ってあるのを思い出し、探した結果出てきた。ラオス民族の美しい織物である。
茶入は小壺のままでは茶入にならず、精々楊枝入れか一輪挿しの類だ。それに象牙の蓋を作り、由緒のある裂で仕覆を作り、桐の箱に入れて初めて茶入となる。濃茶点前では最も大切な道具となる。
写真の裂で牙蓋と仕覆、箱を作ることにした。
これも次なる茶事の伴侶としたいと思っている。