イベント情報

2016年4月4日
茶事の準備

IMG_2213.JPG

 

5月末に催す「樵隠庵茶事」の準備をしています。

このところ多用に過ごしていますが、茶事の準備だけは不思議と苦になりません。

半年前には招く客を決め、予定を伺い一ヶ月前に案内を出します。

茶事の趣向は、その客の顔を思い浮かべながら組むことになりますが、これが中々楽しいことです。

茶事は映画や演劇やライブなとと一緒で、企画、構成、演出が必要となり、主演は亭主、共演は客ということになります。

日時を定め、4時間の演者となる訳ですが、台本は亭主しか読んでいないところがミソです。

特に今回のように、三畳という狭い空間の小間席での所作は、主客それぞれの力量が露呈されることになり、日頃の精進が問われます。

大寄せの茶会のように気楽な気分といかないところが大変ですが、茶事を堪能するにはこれに勝る場面はありません。

先人は、このようなステージで人と人とが交会することがいかに素晴らしいことかを発見したのではないかと思い、今更のように茶の湯のエネルギーが持つ魔力に驚くばかりです。

茶事を知らない頃、また自ら催したことのない頃、ある茶室を設計したことがあります。

その後、茶事を知らない者に茶室は設計できるものではないことに気付き、大いに恥じたものでした。

少し点前ができるくらいで、茶室を語ることの無謀さや茶の湯について語る傲慢さを諌めるため、一念発起して始めた茶事でした。

以来30年、漸くその中身の深さと先賢の凄さが分かりかけてきたところです。

何年かに一度催す小間での茶事は、私自身に問いかける茶の問答でもあります。

「お前は偽者ではないのか。上面ばかりで何も分かっていないのではないか・・・」。

小間席は、ともすれば茶人面して悦に入るような真似を戒めます。己の内省にはもってこいの場です。

 

樵隠庵は建ててから30年の間に露地の苔を五度も張り替えています。

当初、京都から持ってきた杉苔は三度失敗し、桧苔、砂苔、などことごとく枯れ、ゼニ苔に占領されて定着しませんでした。

昨年、近くの桧林に生えていた山苔を採り、実験的に植えで様子を見ていましたが、これが見事に育ち、今年は申し分ない状態となりました。

やはり、この地の気候風土に合ったものが一番ということのようです。

計画中の「三島御寮」造営の露地はこの山苔で行こうと考えています。

 

今、道具を組みながら、日本人の誇りに触れているような気分に浸っています。

山苔の飛び石を渡り来る客との逢瀬を、何よりも楽しみにしているところです。

                                                              

写真: 樵隠庵 外露地の山苔

                                                                   


2016年4月4日