太田新之介作品集

2017年9月19日
作品-20 茶道具-前衛茶碗

1.丹波 変沓 茶碗   タテ8.0    ヨコ15.4  高さ7.5 センチ

  銘 「安蛮技也瑠土(アバンギャルド)」

 

この茶碗が窯から出てきた時、胸の裡で(これだ!!)と声をあげた。

自分の思う理想的な濃茶用の一碗ができたと思ったからだ。

思ったより良く焼けていて、景色も申し分んなく、焼き締め物の丹波としては極上の部類に入るのではないかと思った。
窯焚きをして頂いた陶芸家とお仲間の方々に深謝九拝だった。

あくまでも点てる、喫むという用に供し、ボデーはなまめかしく色気を発し、土味の特色が漂い、しかも新しく・・・。

そして何も自分が使ってみたくなるすがた・かたち、それが目標だった。
しかし、焼物は窯から出てきてからが価値が定まるもので、窯の状態や、窯詰め、薪、焼き方、時間などと相まって、陶芸家のセンスと体力勝負ということになる。

作陶前のスケッチは、全体のすがた・かたちをイメージし、整え、高台も中心に位置し、持った時に重心がバランスしていて軽やかに喫めるように工夫して、作陶は何度となく、やり直し、10個を数える頃、漸くこのひとつと、薄茶用の少し小さなものができた。

後はお任せで、ケセラセラの心境。(内心は心配で…)

伝統とは守るものではなく、その上に新たな創造を重ねて行くもの。そう思っている私はこの茶碗を見て、即座に「アバンギャルド」と名付け箱に書いた。

内部見込み底には銀色の上弦の月の模様が・・・。

何時この茶碗を使おうか、と楽しみは膨らむ一方。

我が国の焼物は4万年前から始まったともいわれている。釉薬を掛けない焼き締め物は太古からの先人の記憶に充ちている。
止められそうにないようだ。

 

銘 「安蛮技也瑠土」

常々、アバンギャルド・前衛とは伝統の中から生まれる最新の創作で、最先端のものだと思っている。

将に温故知新で古きものを下地にして新しきものを知るということだ。

人は皆、伝統の中に生きている、ということだと思う。

 

 


2017年9月19日