太田新之介作品集

2012年9月13日
作品-1 茶道具   

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志野松林図水指   001

銘    「桃山」    径18   高さ17.7      1981・8月作

焼成 三島陶芸教室窯   紐作り 手削り

 

造作余話

33歳にして見よう見まねで作った水指で、陶芸らしきものに初めて触れたときの作品である。

ガス窯で焼いていた陶芸教室の先生が、ガスの燃料を浮かせるために早めに火を止めたため生焼けの志野となった。20数個の作品を作ったがこれを残し、すべて縁のある人に差し上げた。(貰った人はさぞ迷惑だったかも)

茶の湯も知らず、どこかで見た記憶を頼りに作った大振りの水指は、最後にひとつ残り、何年かして茶事に使った。これといった道具が無かったせいもあるが、茶事後に誰かにこれも貰ってもらおうと思っていたものだ。

茶事の際に正客から、「その水指はとても姿が宜しく、もしかして桃山時代のものでしょうか」とのお尋ねがあった。驚いたのは亭主の私。これを自作で生焼けの半端な志野ともいえず、「まさか・・・お上手ですね」、と問答をはぐらかした。内心は褒められ方が半端ではなく、おだてられると木に登る性格も手伝って手放しで喜んだのだ。

以後、この水指は私の所蔵品中の「迷品?」として君臨することになった。

人生の最大事は「ふとした巡り合い」というが、まさにこの水指はそれを実感させてくれるものとなった。その時の正客は美意識が高く、茶味にかなった人だったかどうかは、当時は分からず、今では消息もない。しかし、これをきっかけに私の作陶遍歴は始まり、催す茶事毎の茶道具を作ることになったのである。

生焼けの迷品を「桃山」と名付けたのは、この由緒による。

  ” やきものと同じ炎に身は悶う 柔肌に似る土の弄りも ”

 

 


2012年9月13日