ギャラリー珎玄齋 オークション出品履歴

オークション出品 7/3~7/9

№16
タイ・カロン鉄絵草花鹿文平碗  15~16世紀

カロンは、タイ北部チェンマイ付近に位置した15世紀前後に開かれた窯で、ランナー・タイといわれるタイ北方王朝の北方諸窯では代表的な窯だった。タイ中央部のスコータイやシーサッチャナライのスコータイ王朝やアユタヤ王朝の窯とは異なり、製陶技術は精巧で鉄釉、鉄絵、青磁など高度な作品を遺している。特色は柔らかい雰囲気の器胎に独特の鉄絵文様を描き、透明釉を施したものが多い。

作品説明
時代15~16世紀
オムコイ出土品
端反りの小振りの平碗である。
カロン様の草花文が碗の外周に描かれ、内部見込み底に鹿が描かれている。
黄味で温かみある陶器は、他の青味がかる釉とはまた違うカロン窯の特色のひとつを現わす。滲みのある文様の発色は良い。経年風化はあるが完品といえる。
洗浄済。

サイズ
径:13.5  高さ:5.4センチ


№18
タイ・サワンカローク青磁母抱き像15~16世紀

サワンカロークは、現在のタイ中部スコータイ県、サワンカローク地方にあった古窯名から呼ばれるタイ陶磁器の名である。スコータイ王朝の衛星都市として発展し、13世紀ラームカムヘーン王時代に華僑によって、陶磁器技術がもたらされ窯業が盛んとなった。
日本では戦国時代や江戸時代に輸入され茶人に宋胡録(すんころく)と呼ばれ珍重された。
この地方で作られた焼物は13世紀末から15世紀頃に掛けて焼成され、一部の合子など小品類は16世紀頃まで作られていたといわれる。

作品説明
時代15~16世紀
オムコイ出土品
豊かな乳房をもった女性が、子ではない何かを抱いている像で、青磁で作られている。
顔の左頬にはコブのようなものがある。15世紀頃に盛んに作られた母子像の一種と思われる。お守りといわれるが女性の凛とした姿が好ましい。他に褐釉の作品も見かける。経年による風化があるが、完品といえる。洗浄済。

サイズ
タテ:4.6  ヨコ:4.5  高さ:10.1センチ


№19

タイ・カロン鉄絵動物 コブ牛 15~16世紀

カロンは、タイ北部チェンマイ付近に位置した15世紀前後に開かれた窯で、ランナー・タイといわれるタイ北方王朝の北方諸窯では代表的な窯だった。タイ中央部のスコータイやシーサッチャナライのスコータイ王朝やアユタヤ王朝の窯とは異なり、製陶技術は精巧で鉄釉、鉄絵、青磁など高度な作品を遺している。特色は柔らかい雰囲気の器胎に独特の鉄絵文様を描き、透明釉を施したものが多い。小品の動物類は希少で造形的価値が高いといわれている。

作品説明
時代15~16世紀
オムコイ出土品
鉄絵動物の出土例は鳥が最も多く、コブ牛は少ない。渦巻文や点描の文様がカロンの特色をあらわし、犬などと同じ意匠となっている。文様の発色も良く、良品といえる。
カロンの動物造形物はお守りか玩具として作られ、副葬品とされたものもあるといわれる。
造形的に優れたものが多く、今にも動き出しそうだ。水洗浄済。

サイズ
タテ:10.1  ヨコ:4.4  高さ:7.8センチ

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東南アジアの古陶磁考-2

002 タノントンチャイ山脈の民族

前号で、タイ北西部にタイとミャンマーの国境を隔てるタノントンチャイ山脈があって、その数百キロに及ぶ峰々の高度1200~1500メートルの南斜面から10~18世紀の古陶磁器類が出土して、その数は1980年頃から2010年までに十数万点を超えていたと。
また山脈のチェンマイ県オムコイやターク県メソート近傍からカンボジアの11~12世紀、ミャンマーの14~16世紀、ベトナムの13~18世紀、中国の6~18世紀のものが出土したと書いた。
その事実は、実際この眼で見て手にしているので疑いの余地はないが、謎だったのは、誰がどのような理由でこれらの歴史的遺物を発掘しているのか、ということだった。

掘り出しているのはタイ領のタノントンチャイ山脈沿いに暮らす山岳民族で、特にカレン族が主だと聞いていた。
3回目の現場発掘に立ち会った時、カレン族が住む部落に行き、その訳を知ることとなった。
タイのカレン族は、1900余りの村に約88,000世帯、430,000人ほどが住み、タイの山地民族の中では最大の人口を誇る(人口比はタイの山岳民族の50%近くを占める)。居住地はタイ北部、中部の15の県に広くまたがっているが、特に人口が集中しているのが、チェンマイ県、メーホンソン県、ターク県の、カンチャナブリ県などのミャンマーとの国境地帯である。

他の山岳民族が、主に中国南部からの移住に対し、カレン族はミャンマー東部が起源といわれ、タイには18世紀から移住が始まったというが、ミャンマーにはカヤ州を中心に現在300万人以上が住んでいるという。

カレン族は民族の独立をかけて半世紀に亘りミャンマー政府と独立闘争を行ってきた歴史を持つ。2000年代になるとミャンマー国軍がカレン族への極めて激しい民族浄化(殺人、強制労働、食糧・物資の略奪や強姦など)を行い、幾つもの小さな農村は消滅させられ、戦乱を避けてタイへ脱出したカレン族は10万人規模という。

彼らはアヘンの原料であるケシの栽培で生計を立てていたらしいが、現在ではバナナ栽培など半農半漁と発掘による収入が主といっていた。中でも現金収入の目的は、戦闘に必要な自動小銃購入だった。

2012年1月にカレン民族解放軍とミャンマー軍事政権軍は停戦合意に至ったというが、私が訪ねていた頃は、戦闘が続いていた最中だった。

パゴダ基壇の発掘により出土する中国宋・元・明・清代の陶磁器の優品も、山脈の山腹を掘った穴から出てくるタイ、ベトナム、カンボジアなどの古陶磁から得る収入は自動小銃に変わっていたのだった。

私が支払った代金が武器になっていたとは…。

貴重な文化財が戦闘のために発掘される事実に接し、私はその縁の重さを改めて思い、出土した品々を粗末に扱ってはならないと思った。

『東南アジアに渡った・元明のやきもの』を上梓したのも、そのような背景があったてのことだった。

 

 

写真:下から3枚 この折に発掘された中国明代龍泉窯「青磁算木花入」
大切に使わせて頂いている

 


ただいまの出品につきましては
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ギャラリー珎玄齋
https://auctions.yahoo.co.jp/seller/g_chingensai

よりご高覧ください。

2017年7月5日