ギャラリー珎玄齋 オークション出品履歴

オークション出品 6/26~7/1

№12
タイ・サワンカローク白濁釉褐彩唐草文合子 15~16世紀

サワンカロークは、現在の中部スコータイ県サワンカローク地方にあった古窯名から呼ばれるタイ陶磁名である。スコータイ王朝の衛星都市として発展し、13世紀ラームカムヘーン王時代に華僑によって陶磁器技術がもたらされ窯業が盛んとなった。
日本では戦国時代や江戸時代に輸入され、茶人に宋胡録(すんころく)と呼ばれた。
この地方で作られた焼き物は13世紀末から15世紀頃にかけて焼成され、一部の香合など小物類は16世紀頃まで作られていたといわれる。
小型の合子類は、元々はキンマ(ビンロウジと石灰とキンマの葉を噛む習慣による嗜好品)の入れる容器として作られたものだが、日本では茶人の使う香合として江戸時代の頃より珍重された。

作品説明
時代15~16世紀
オムコイ出土品
果実マンゴスチンの実を模したものとされ、蓋に果実の蔕のような鈕が付く。
身蓋とも線彫りで文様を表わし、褐釉と白濁失透釉で塗り分けてある。身の内面にも褐釉が掛かる。我が国では茶道具の「柿香合」と呼ばれ、「形物香合相撲番付表」(安政2年1855年刊)の西前頭六に位置づけられた類型のものである。
経年変化による風化があるが、欠けなどはなく完品といえる。

サイズ  口径:5.6  高さ:5.2センチ

№13
タイ・カロン鉄絵動物 鳥 15~16世紀

カロンは、タイ北部チェンマイ付近に位置した15世紀前後に開かれた窯で、ランナー・タイといわれるタイ北方王朝の北方諸窯では代表的な窯だった。タイ中央部のスコータイやシーサッチャナライのスコータイ王朝やアユタヤ王朝の窯とは異なり、製陶技術は精巧で鉄釉、鉄絵、青磁など高度な作品を遺している。特色は柔らかい雰囲気の器胎に独特の鉄絵文様を描き、透明釉を施したものが多い。小品の動物類は希少で造形的価値が高いといわれている。

作品説明
時代15~16世紀
オムコイ出土品
鉄絵動物の鳥の中でも小さいが、愛らしく表情がある。
点描の文様がカロンの特色をあらわし、渦巻文にはない意匠となっている。
わずかに釉の劣化とはがれはあるが、文様の発色も良く、良品といえる。
カロンの動物造形物は優れたデザインのものが多く、表情も有り、今にも動き出しそうだ。
水洗浄済。

サイズ
タテ:6.2  ヨコ:3.0  高さ:4.8センチ

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*前回は沢山の方にご参加頂き有難うございました。
今回もご高覧頂きますようお願い致します。

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東南アジアの古陶磁考-1

はじめに
私は1998年から2000年にかけて四度タイに渡航した。
主たる目的は、タイ北西部のタノントンチャイ山脈から出土するやきものに会うためだ。子供の頃からやきものに興味を持ち、この頃、茶事をするようになって自分でも作陶をするようになっていた。
仕事柄、文様に関心が高く、古代の文物や絵画から行き着いた先が中国元の染付磁器に描かれた文様だった。建築彫刻における龍や鳳凰などの絵画的原点がそこにあった。
そして縁あって元の染付が出土するというタイの山奥へ。
出土するものは想像を超え、目を疑うものばかり。しかし、眼前には優れたとしか言えない美術品が。
故あって先年、『東南アジアに渡った・元明のやきもの』(2003年里文出版刊)を上梓した。
また再び出土品を分類整理し、その真とするところを記して、世に出すことになった。このシリーズは、私のやきもの遍歴ということになりそうだ。
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001 謎の山脈
タイ北西部にタイとミャンマーの国境を隔てるタノントンチャイ山脈がある。
この数百キロに及ぶ峰々の高度1200~1500メートルの南斜面から10~18世紀の古陶磁器類が出土している。
その出土数は想像を超えるもので、1980年頃から2010年までに十数万点を超えているといわれていた。

特にチェンマイ県オムコイやターク県メソート近傍から発掘された陶磁器は、カンボジアの11~12世紀、ミャンマーの14~16世紀、ベトナムの13~18世紀、中国の6~18世紀のものが出土した。
またもうひとつの出土場所は、朽ちて跡が見えなくなった遺跡で、パゴダ基壇下より出土する陶磁器である。

タノントンチャイ山脈に近いミャンマー領やチェンマイ、チェンラーイ近郊に遺るパゴダ基壇下から出土される陶磁器も、中国の宋代磁州窯や元の染付から明末清初のものまであり、中国陶磁史上でも重要な位置を占めることになると思われる。

出土品の状態は、約三割が発掘時に破損し、完品で出土してもオムコイ、メソートから出土する陶磁器は赤土から発掘されるため、土の有機物が器体に侵入し、土臭を持つ。

一方、パゴダ基壇下のものはレンガ下の砂質土に埋められているため、陶磁器類の風化や劣化が少なく、洗浄を施せば新品と思えるようなものもある。

これらの発掘はタノントンチャイ山脈中腹に居住する山岳少数民族である。

彼らは陶磁器類がどの場所から出土するのかを熟知していて、ほとんど空堀はないという。またパゴダ基壇下はすでに朽ちて崩壊しているため、見過ごすような場所であるが、彼らはまたその位置を特定できるという。(続く)

 

 

写真:オムコイ山中の発掘現場 1998年

 

 


ただいまの出品につきましては
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ギャラリー珎玄齋
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よりご高覧ください。

2017年6月26日