日本のすがた・かたち

2020年6月18日
夏越大祓と夏祭り

「夏が来れば思い出す~」。
六月の夏越大祓の「茅の輪」くぐりが始まると、故郷の夏祭りと青春真っただ中の頃、友と歩いた尾瀬の湿原を思い出します。

近くの三嶋大社では、毎年、古式に則り夏越の大祓式・茅の輪神事を斎行していましたが、今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、神職のみにて行い、一般の参加はできなかったようです。でも茅の輪は6月7日(日)より参道に設けられ、くぐれるとのことです。

大祓は、半年の節目にあたり、日常生活において知らず知らずのうちに犯している罪や穢れを祓い清め、清らかな姿に立ち返らんとする神事で、茅の輪をくぐることで、疫病を避けられるとの信仰があります。私の場合、今年はコロナ自粛のために輪をくぐる機会を失っていて、多分、罪穢れがもう半年分溜まり、大晦日まで持ち越しそうです。(トホッ)

7月20~22日までは郷里漁師町の「阿治古神社」の夏祭りです。
創建は古く不明で、記録によれば、天正18年(1591)、豊臣秀吉が厚木城を攻めた折、網代から軍船を出すことを要請し、30艘の船と漁師たちが協力した手柄に応え、神社の祭典の神船とその奉仕者に刀を授け、流れ瓢箪の幕染めを許可したとのことです。

現在でも祭りには奉仕者は流れ瓢箪の幕染めを使い、神船「両宮丸」の巡幸渡御が勇壮に行われます。また無形文化財に指定されている鹿島踊りの奉納や山車の練り歩き、太鼓など、小さな漁師町の祭りとは思えないほどの熱狂ぶりです。

私は子供の頃からこの祭りに使う山車に乗るのが好きで、今でも彫刻で埋め尽くされた天照大神や龍神、故事来歴の人物、吉祥文など鮮明に覚えています。町内にある神船、八つの山車の彫刻は飛騨の匠、南砺市の井波の名工、立川流の彫刻師が彫ったとも聞いていました。

 

後年、私は建築家を志し、伝統建築の造営に手を染めてきました。
その中には自然木をそのまま使う黒木造を始め、ケヤキ、クス、カツラといった材の彫刻のデザインする仕事に多く携わる縁がありました。

今日までその仕事は続いていますが、木材を目にしてそれをすがた・かたちに設計する時、私は何時も夏祭りの山車で遊んだ思い出に浸ります。
そして、漁師だった父の姿を瞼に浮かべます。

 

人間は何処で生きても、生まれてから今日までの旅を続け、また明日へ向かって歩いて行くようになっているようです。

 

写真: 上 三嶋大社「茅の輪」神事
中 阿治古神社(祭神 天照大神) 熱海市網代
下 夏祭り 神船

 

 

 


2020年6月18日