日本のすがた・かたち

2019年5月1日
令和の天皇陛下

今日は5月1日、令和の時代の幕開けです。
昨日は大晦日と新年を迎える気分を味わっていました。

日本列島は大祭りで、時代を皆なで跨ぐような明るい雰囲気が横溢していました。
公平感の溢れる世相と、多様性のある国民の意識は、他の国にはないことだと思います。
その根源は、「皇室」という我が国特有の文化形態にあるようです。

 

紀元前の天照大神から続く皇統は、初代神武天皇から数えて126代といわれます。この歴史的時間の継承は稀有な出来事で、民族史上謎ともいわれています。
三大日本文化は「神道」、「日本仏教」、「皇室」とされますが、その中で最も普遍性の高い文化は「皇室」、つまり天皇という世界に類のない存在に他なりません。

 

天皇には権力、財産、市民権、投票権など、国民の有する私的所有権はなく、過去には権力者となったこともありますが、軍隊も持たず、城壁に守られた住まいもなく、つまり「日本の象徴」という特異なすがたで存在しています。

私は、ここに日本民族の優れた叡智があるとみています。
列島に暮らしてきた先祖たちは、公平という概念を創出し、平等という意識こそが権力を生む根源であり、争いの元となることを知っていました。
平等は、一見正しいように思えますが、実はこの平等意識こそ誤解による闘争を招いているものです。全ての人間は平等にはなり得ない、一人ひとりに差や格差があることが自然である、として、人間の個としての存在を認め合い補い合う、という考え方です。

権力を保持しない、という選択は、天皇の存在を神格化するところまで行きましたが、今日に至り、天皇は「国民の幸せを祈り、世界の平和を願う」という、世界にも稀な存在となったわけです。

 

平成12年11月10日第50回全国植樹祭に天皇陛下がお手植えされたヒメシャラと皇后陛下がお手植えされたヤマボウシを、皇太子殿下(新天皇)がお手入れされました。
その折、静岡のホテルでレセプションがあり、ワイングラスを持たれた皇太子殿下から、「お野立所」の建築について「良い仕事を成されましたね」と声をかけて頂き、「天皇陛下と皇太子殿下にご使用頂き感激しております」と伝えました。

その折の高揚感は、何とも説明の難しいものでした。
ただ、一心に建築家を目指してきて良かった、と思ったことを覚えています。
あれから7年、皇太子は今日、新天皇に即位されました。

 

平成から令和へ。
この二日間の出来事は、文化としての象徴のすがた・かたちを世界に披歴し、日本の叡智を垣間見せたことと思います。

今日、南米ベネズエラでは独裁的なマドゥロ大統領に対抗し、軍の一部がクーデターに動き、国民に蜂起を呼びかけているという昨今。権力の悪しき連鎖は世界中に充ち満ちています。

天皇は国王ではなく、我が国の国の象徴です。
我が国の平和は、象徴天皇が牽引しているといっても過言ではありません。

天皇とは日本文化のひとつの結晶体。子々孫々に伝えて行きたい麗しい和の心です。

 

 

写真:平成11年5月30日 第50回全国植樹祭 天城湯ヶ島町(現伊豆市)
下 平成24年11月10日 第36回全国育樹祭 皇太子(令和の天皇陛下)によるお手入れの儀

 

 


2019年5月1日