日本のすがた・かたち

2019年3月17日
黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)

天皇陛下が4月30日に退位することを皇居・宮中三殿に報告する祭祀(さいし)「奉告(ほうこく)の儀」が12日午前、執り行われました。
陛下の退位に向けた一連の儀式が始まり、4月30日の国事行為「退位礼正殿(せいでん)の儀」まで9の儀式が行われます。

この日の祭祀は午前10時ごろに始まり、陛下は、「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」という天皇のみが身につける束帯をまとい、厳かな表情で、皇祖天照大神(あまてらすおおみかみ)をまつる賢所(かしこどころ)の回廊を進まれ、内陣で、退位することと、その期日が4月30日であることを報告する「御告文(おつげぶみ)」を読み上げられ、歴代天皇と皇族がまつられている皇霊殿、国中の神々がまつられている神殿でも同様の御告文を読み上げられたそうです。

午後には天皇陛下が、伊勢神宮や初代とされる神武天皇、孝明、明治、大正、昭和の各天皇の陵(みささぎ)(墓)に使いを派遣する「勅使(ちょくし)発遣(はっけん)の儀」も御所で行われました。
天皇の退位は、憲政史上初めてで、宮内庁は平成の即位の儀式や、通常の宮中祭祀などを参考に儀式を立案したといわれます。これから退位の期日までの儀式はいずれも先祖への拝礼となります。

3月26日 神武天皇山陵(奈良県橿原市)に天皇陛下が拝礼する
4月18日 伊勢神宮(三重県伊勢市)に天皇陛下が拝礼する
4月23日 昭和天皇山陵(東京都八王子市)に天皇陛下が拝礼する

4月30日には、退位礼正殿の儀(皇居・宮殿)。天皇陛下の立場として最後に行う儀式で、国事行為として、三権の長や閣僚、地方代表らも参列し、首相が国民代表の辞を述べ、陛下が最後の「おことば」を述べます。

 

黄櫨染御袍が天皇陛下の服として定められたのは、弘仁11年(820年)とされます。陛下が退位を黄櫨染御袍の束帯をもって皇祖天照大神に報告されることは、我が国の永い歴史と共に先祖が営々と文化を繋ぎ、育んできたことを実感させます。

 

「身を浄め、威を正し、先祖に報告する」、その儀礼、儀式を営々と未来に託してきた日本人。その象徴たる天皇の皇室。私は二千数百年の歳月を凝縮した日本文化の大きな塊をここに見ます。

 

幾多の困難を乗り越えて伝え来た先人の叡智が平成の御代から新たに引き継がれます。
昭和、平成、新たに改元される年。この時代に生きあわせたことを嬉しく思います。

 

天皇は、日本人にとって再生のシンボルです。

 

写真:今上天皇即位式 黄櫨染御袍のお姿 (Webより)


2019年3月17日