日本のすがた・かたち

2019年1月26日
寝た正月

 

果てない宇宙のような空間に,建築だろうか、ゆっくり回転しながら近づいては遠ざかって行く。
数百もあるだろうか、確かに皆見覚えがある。
手の届くところに禅寺の塊が来た。
それは木でできた模型のようで、木組みも確かな出来栄えだ。
住宅も茶室も近づいては遠ざかって行く。
私は宇宙遊泳するようにその建築の間をさまよっていた。

 

正月の5日から高熱を発し、一週間休んでいました。
どうも毎年の正月休みは体調を崩すことが多く、今年も同じ半月でした。
高熱でうなされていた時に観た幻覚と妄想の、回転しながら漂っていた建築は、気が付けば全て今まで自分で設計してきた建築でした。
(まあ、50年も設計していれば…)

 

その中に金に輝くUFOのような建築がありました。
それは現在取り組んでいる「茶の湯のステージ「三島御寮」造営計画」のマスコットキャラクターでした。

 

我が思う建築家を目指して50年。未だその途上にありますが、ひとついえることは「私も仕上げの時期に入ったようだ」と思うことでした。
建築は、基礎造りから始まり、本体架構、仕上げの工程を経て完成します。左官工事に例えていえば、下地、中塗り、仕上げの工程となり、私の仕事も仕上げの時期を迎えたということです。
年齢もさることながら、漸くやることが手に取るように見えてきた、そのことの実感に直結しています。このリアルさは胸を熱くし、命をかきたてるエネルギーに満ちています。

 

「人間の幸不幸は心が決める」、とは先賢の言。それも健康があっての相談で、弱った体力や認知を得ていたら、心の判断は難しく、また何人もそれを避けることはできません。

 

この寝た正月、高熱妄想世界に浮遊しながら唄った都々逸
  〽 ボケた振りしてお尻をさわる「オジイちゃん、オイタしちゃダメよ!」
     「ん、」にっ、と笑って舌を出す

 

唄いながら、ようやく設計図に向っている毎日です。

 

写真:木造のUFO

 

 


2019年1月26日