日本のすがた・かたち

2018年3月27日
句集・出版へ

成功哲学提唱者のナポレオン・ヒルは「思考は現実化する」といっています。
建築の設計を通して物事に関心を持ち、長くそれを続けていると意外なところで人に出会い、思わぬ貴重な体験をすることがあります。
この50年の設計生活を思えばその連続で、六次元弁証法からすれば思考の現実化は、「心は方向性をおびて時空に融けて在る」ということになります。
先賢は、崇高な志をもち強い想念を発すれば思いが叶う、としていますが、思うことは実現するという意味にもとれることです。

人生からすると、50年という作業時間は長い部類に入ると思いますが、数日前、あるきっかけで、この間に作ってきた俳句二千余の編集をすることになりました。
七月頃に句集『千々繚乱』を出版するための準備です。

(よくもまあ、拙句を多量に…)
読み返してみると、設計を主に暮らしてきた折々の思いの羅列ですが、今となっては懐かしく、出会い、別れた人たちとの交流の日々が思い起こされ、改めて人生の最大事は邂逅であることを知らされました。

「思いを強く持ち、発し、保っていれば、その心は時空にとけていて実現して行く」
原稿校正後の感想は、この実現可能の方向性、つまり心の在りようのことでした。

(崇高なのか、いやそういえないかも…)
(私の崇高とは何をしていえるのか…不純ではないことか…)
先日、このような自問自答を繰り返しながらビールを飲んでいたら、何時しか寝ていました。

多用に過ぎる毎日を送っていると、立ち止まって考えることが少なくなり、忙しさとは、まさに心を亡ぼしていることを実感します。
俳句を読み返している間、独りになって句作していた時間の充足感が呼び覚まされました。
人との共同作用により、生きる便利さや面白さはありますが、それはまた、自らの「心が方向性を持って時空に融けて在る」ことから距離をおくことになるのだと。人生の充足は独りぼっちにあるのではないか、と。

設計は孤独な作業です。設計に心を奪われてきた私は、孤独と寄り添い、とても面白い時間を過ごしているのではないかと思っています。
(だけど、この忙しさを何とかしなければ…)

 

   〽 忙しいって言ってるくせに 三味の音を聞きゃ目を垂らす

 

 

画像:「建築家?」 ヒノミコ画

 

 


2018年3月27日