日本のすがた・かたち

2018年3月6日
季節性ツンツン症候群

 

しばらく俯き加減の姿勢が続くと…ツンツン!
(あっ、来たな!)
もう二十年来になりますが、ご多分にもれずいわずとしれた花粉症です。
毎年2月から梅雨前まで悩ましく、これを「ツンツン症候群」と名付けています。
名の由来は、茶の点前中に起きたことからです。

一心にお茶を点てていると、粘性のない鼻水が二滴、茶碗の縁に前触れもなく落下。
「アッ」と客から声が…。
苦し紛れに、「それでは自服で」と、作り笑みを浮かべながら…。

 

日本列島の山には杉が最も多く、戦後は植林が奨励され、山という山に植えられました。

30年以上の孫の代になって使えるようにと、将来に向けての思いやりの政策でもありました。
ところが経済的利潤の追求を第一としたエコノミックアニマルが活動した昭和40年(1965)頃から、安価を理由に外国産の木材を大量に輸入し、国内の杉やヒノキは放置されることになりました。
成長した杉は全国に花粉を大量に巻き散らすことになったのです。放置された杉のしっぺ返しが花粉症といえるようで、現代病の花粉症は、人間の欲から発生したともいえます。

石器時代から造られてきたはずの木の建築は、工夫を重ねながら今日に至っています。木造建築技術は世界に類のないもので、林業とともに高度な生活文化を形成し、継承してきたといえます。
これからの時代は木の建築を奨励し、人工林は伐採サイクルを定め、木と共存できる建築環境を保持できるようにすべきだと思います。
人間も自然の一部で構成員であるという感覚は、なるべく土や石、木や草というような自然界に存在する材料で構成した建築に居住することが最適なはずです。

我が国の木造技術はオリエンタルマジックと称されるほど高度なものです。技術は革新を伴うものですが、先人はこれを成し遂げてきました。私たちもこれを継承し、新たな時代に呼応できる木の建築を創り続けて行きたいものです。

 

私は花粉症を「季節性ツンツン症候群」と名付け、苦しみながらも仲良くしています。ツンツン症状がでると、杉、ヒノキを伐って使わなくては、と思いを新たにします。

それにしても、私の耳鼻咽喉を直撃する花粉症の色気のないこと。妙齢の女性の近くに寄れないことは何よりストレスです。
これから三ヶ月はクスリをやらずにツンツンと同棲状態。

仏陀は生きているのも苦しみと説いています。正にその通りだと…。

 

 


2018年3月6日