新之介文庫だより

2019年8月28日
近詠・句歌都々逸49

 

前庭に 酔芙蓉一輪 盂蘭盆会

 

迎え火に 夫々の顔 写り過ぐ

 

風鈴や あの歳までの 音か涼し

 

嗚呼またや そうして往くか 故の人

 

残火や 昔の恋の まざまざと

 

気に留めて 筆を走らす 秋の詩

 

白露なる 縁の道に 月円か

 

あの日から 口を噤んで 経を読む

 

道連れに して礼を言う 蝶一羽

 

海に来て 雲看る秋の 墳墓かな

 

設計は ひとり善がりの 子守唄

 

何の意味か あって設計 未だ未完

 

いつまでも 生きている夏 黒ヤモリ

 

鈴虫の 音の恋しけれ 草を引く

 

待ちぼうけ 彼ひと忘る 宵の月

 

蓮の実に 何時かの恋を 思い出す

 

夏祭り 射的の下手な 人ばかり

 

知己の人 知らぬ間にはや 黄泉の旅

 

漸くと ここまで来たか 今絶頂

 

今ココや 堪能ばかり 秋の夜

 

 

 


2019年8月28日