新之介文庫だより

2019年8月19日
近詠・句歌都々逸48

 

酔芙蓉 咲いて命の 色を見る

 

長崎や 冥土に咲ける 酔芙蓉

 

あの頃の 色香のままと 紅衣装

 

水遣れど 襲う群蚊に 苔荒らす

 

蝉の声 蓮散り咲ける 酔芙蓉

 

広島忌 黄泉にも開け 紅の蓮

 

露地の主 我ならぬ群蚊 唸りける

 

仏師来る 香木何時かの 夏の作

 

お薬師を 彫る約束や 夏の雲

 

クラクラと 熱中症か 呑み歩き

 

夜も更けて 明日の夢にと 賭ける空

 

知る人の またひとり欠く 宵の月

 

月見れば 設計いとも 戦ぐ風

 

待つことも 今ココに在る 蝉時雨

 

泳ぐ宵 官能なるや 水飛沫

 

水遣れば 葉の生きいきと 夕涼み

 

縁側に 蜻蛉の来たり 水打てり

 

設計や 茶の湯のすがた 和の儀式

 

冬瓜や 思い出龍女 七面山

 

夢に出よ 新たな人よ 恋さぐり

 

 


2019年8月19日